第42話 六人目のメンバーと初戦闘!
「ユウくんさ、なんで私がモテないと思う?」
個人的に切実な問題だったんだけどユウくんは軽やかに笑って「山田さんにはその拳があるじゃないですか!」と返された。
そういうことじゃねーんだよ。
黙らせると「そういうとこだと思います!」と真顔で返された。
せやな。
何故私が急にモテを気にし始めたかと言うと、先日同級生で友人のさなぎさん経由で合コンに誘ってもらったのだが私だけ評判が芳しく無かったのだ。
解せぬ。
「あーあ。魔法少女のリアも相変わらず人気最下位独走してるしなー」
腕を後ろで組んで拗ねたポーズをしているとヨイショの上手いユウくんが得意気に言ってきた。
「俺、山田さんの推し活しようと思って購買部で魔法少女リアのグッズあるだけ買わせていただきました!」
渾身のドヤ顔だった。
「痛バとアクスタケースです!ビジュアルカードケースももちろんあります!在庫が潤沢でコレクションが一気に増えました!」
一気に差し出されるリアのグッズの数々。
在庫が売れ残り過ぎているから初期のグッズから気軽に買う事ができる。
それを見た由利亜が対抗心を燃やしてきた。
「わ、私だって真理亜の…リアのグッズは全部持ってます!!負けてません!」
勝ち負けじゃねーからな?
いやでも身内にとはいえ人気があって嬉しいのは事実。
私が照れているとユウくんが「佐藤専務もこの間全種類、使用用・保存用・観賞用で買ってました!」と嬉しくない情報を入れてきたので一気に気分は沈んだ。
何をやってるんだ。あの男は。
そんなやりとりをしているとボスから緊急招集が掛かった。
やけに真面目な顔をして、腕組みなんかしちゃっている。
「実は、今度この施設に近隣の小学生が見学に来る事になったんだ」
「えっ、いいんですか?そういうの」
「まぁ、社会貢献の一環だしね。この組織のことも民間人には知れ渡っているしね。購買部で民間人も魔法少女のグッズ帰るしね。問題は変身前の魔法少女がとても小学生に見せられないことなんだ」
ボスが深刻そうに言う。
そうだった。変身前のメンバーなんて由利亜以外社会不適合者ばかりだ。
「子供達は魔法少女に会えることを楽しみにしているらしい」
「変身してから会えばいいのでは?」
由利亜が提案するがボスが首を横に振る。
「魔法少女になるのって結構エネルギーつかうんだよね。小学生の見学くらいで許可が出なかった。三十五歳と男とピーマン形のエイリアンを出すわけにはいかないから由利亜くん、君だけが頼りだ。小学生の接待をしてくれないか?」
「やだー!ボスったら!三十五歳をdisらないでくださいよー!セクハラ〜!」
肘鉄かましたらボスが倒れ込んだ。
最近のボスは打たれ弱い……もしかして、私が強くなっている!?すごい!三十五歳でも大男を滅せられる!護身用本出したら売れるかな?
私がドキドキしながら印税生活を夢見ていると由利亜が不安そうにしていた。
「私なんかで務まるでしょうか…」
その問いに私は軽快にウィンクしながら返した。
「大丈夫!人間の女の子ってだけで充分だよ!」
「ハードルが低い!」
最近の由利亜はツッコミも出来るようになってきた。
どんどんここに染められてきているな……。
ユウくんは「元敵の俺は隠れているか休んだ方がいいですよね?」とボスに尋ねていたが、当日は由利亜以外の魔法少女は敵が出現しない限り一般事務員に混じって仕事をすることになるそうだ。
さて、当日ははしゃぐ小学生をさも一般事務員として扮して見守っていたが、こちらの事情なんてお構いなしなのが敵というものだ。
けたましい警報音が鳴り響き、混乱する小学生にすぐに魔法少女がエイリアンをやっつけてくるからモニターで見守っていてね!と落ち着かせて現場に走って向かう。
そこでみんな変身していくが来客用モニターにもメディアにも映らないようにこっそりと変身していって敵エイリアンに向かっていった。
そこでユウくんが自分のステッキを持ってじっと見つめている。
そうか。元敵からの初めての魔法少女としての戦闘だもんね。
色々と思うこともあるだろうと見守っていると、ユウくんは決意を固めて前を向いた、
「俺は魔法少女になって、みんなを助けたい…!」
ユウくんがステッキを握り締める。
「真実の英雄になる!」
そう言ってユウくんはステッキを掲げて魔法少女に変身した。
そっか。真実の英雄はコンプレックスと共にユウくんの憧れなんだ。
ユウくんの本心を知って少しユウくんが知れた気になれた。
ユウくんだけに任せてられない!
私も魔法少女として戦わないと!
「魔法少女のこんちきしょー!」
ステッキを掲げて変身するとユウくんから拍手された。
「凄いッス姐さん!魔法少女に対してこんちきしょーと思いながらもあんなに活躍されてたんですね!」
「うん…まあね」
純粋な瞳で褒められるとは思わず少し照れた。
「行こっか!!」
「はい!」
先に戦っているみんなに合流するため私達は駆け出した。
状況はこちらの有利だった。
なんだよ。真面目にやれば強いじゃん。普段からそうしてくれ。
そう思いながらエルボーをキメて道路に敵を沈めていく。
しばらく手下のエイリアンと戦っていると佐藤太郎が現れた。
「リア、なんで戦うんだ」
佐藤太郎の表情は真剣だ。
「この世界をエイリアンが植民地にしようとしたからでしょう?」
「人間の世界でも植民地にしようと戦争は起きてきた。それに、する側にも理由はある」
「……つまりは?どういうこと?エイリアン側の事情があるってこと?」
「そうだ」
佐藤太郎は頷いた。
「君達は彼等への理解を深める必要がある」
佐藤太郎の瞳は真摯だった。
浮気しただのしてないだのと別れ話に発展した時以上の誠実さで敵側のエイリアンの在り方を伝えようとするその姿は真実だろう。
……エイリアンの事情ってなんだろう?
なんでこの星を植民地にしようとしたんだろう?
今更ながらの疑問で頭が疑問符で埋め尽くされる。
「我々は分かり合える。きっと」
佐藤太郎の言葉に戸惑っているとユウくんが佐藤太郎に突っ込んで行った。
「俺は馬鹿だからよく分かんねーですけど!どんな理由があっても手を出したらいけないんじゃないんですか!?」
ユウくんの正論は体共々軽く佐藤太郎にいなされる。
そのまま勢いよく地面に倒れ込むユウくん。
「ユウくん!」
「えっ!?ユウくん呼び!?ずるい!!僕なんか付き合っていた間も佐藤呼びだったじゃないか!?」
「変なところで張り合うな!」
佐藤太郎を張り倒しキャメルクラッチで黙らせる。
「うう……」
やり終えると佐藤太郎は息も絶え絶えだった。
よし!戦える!
「今日のところは帰るよ…。リア達に僕達の事を考えてほしい事が第一の目的だから」
患部を抑えながら佐藤太郎が手下と共に撤退していく。
「待って!それってそっち側の考えを知れって事?なんで普通に教えてくれないの?すぐに言えばいいじゃん!」
佐藤太郎は首を横に振った。
「それじゃダメなんだよ…。君達達自身で答えを見つけないと。会長もそう仰っていた」
私達自身で見つける答え。
「それがお祖父様の、会長の望みですか?」
ユリアがいつの間にか側に来ていた。
「俺が言えた義理じゃないですけど、分かり合いたいなら最初から話し合えばいいんじゃないんですか?」
ユウくんも復帰していた。
私達三人を悲しそうに見ながら佐藤太郎は無言で帰って行った。
私達も徒歩で帰るけど、悪の組織も徒歩で帰るのなんか間抜けだな。
悪のエイリアン側の、敵側の理由。
悪のエイリアンはもしかして悪じゃないかもしれない。
謎が深まり私はとりあえず真実の一欠片でも知るために、何か知っているかもしれない上層部に殴り込みをかけようと決意をした。
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