第37話 仲間内からの評価が酷い

デスクでコーヒーを飲みながらわいわい騒ぐ周囲を見て思う。

そういえば、辞める気だったんだよな。ここ。

なんだかもう居心地が良くてすっかり居座っているけれど、楽しくて今は辞める気がしなくなってきている。

けど、最近は元カレにして悪の組織の専務をしている敵役佐藤太郎と顔を合わせるのが嫌で嫌でまた辞めたくなってきた。

でも元カレと会うのが嫌で辞めますなんて負けた感があって嫌だ。佐藤太郎に負けたくない。

絶対潰す。

始末書にも熱が入るってものだ。

「よっしゃ!始末書三十五枚書き終わりました!総務に出してきます!」

勢いよくデスクを飛び立ち総務へ提出に向かう。

由利亜が少し心配そうな顔をしていたのなんて気が付かなかった。

「真理亜…始末書三十五枚はさすがに多いのでは…?減給とか大丈夫でしょうか?」

まっっったく気づかなかった!

私も問題児達のこと言えなかった!

佐藤太郎を潰したい一心でビル潰してしまった!申し訳ない!!


総務に散々怒られながらも書類を提出していると警報音が鳴り響いた。

ダッシュで敵の登場地区まで走って毎度のことながら息切れして、これ経費でタクシー使っちゃダメかなぁ?と思いながら叫んだ。

「魔法少女のこんちきしょーーー!!」

ゴテゴテのかわいいステッキを掲げて心のままに叫んで、山田真理亜から魔法少女のリアの華麗なる変身である。

「魔法少女のリア!華麗に見参!」

久し振りに名乗りまでしてしまった。

雑魚敵をゴテゴテステッキ…最早凶器でぶん殴ったりプロレス技で沈めていたら奴が出てきた。

佐藤太郎!マザコンナルシストクソヤロー!!

別れ際の事とか思い出してムシャクシャしながら力技で敵をしばいて佐藤太郎の元へ向かっていくが、居たのは佐藤太郎だけじゃなかった。

新しいパシリと佐藤太郎が居た。

「あなたが新しいパシリ…」

「そうだ!ニューパシリとでも呼んでもらおう!」

「パシリはパシリやんけ」

ドゴッと殴り倒して動かなくなったことを確認してから佐藤太郎に立ち向かう。

「もう一度やり直さないか?真理亜」

「次に本名で呼んだら顔面凹ます!」

私の本気と殺気を察して佐藤太郎が「リア…」と言い直した。

そもそも佐藤太郎は何故復縁なんて求めるんだろうか?

正直言って付き合っていた時もいい彼女とは言えなかった。

アッパーで身バレする程度にはかましてきたし他の技も散々仕掛けた。……マゾか?

えっ、マザコンナルシストクソヤローに加えてマゾなの?まじ?こんなのと付き合っていたなんて汚点過ぎる!!恥ずかしい!!

「リアは多少アグレッシブなところがあったけれど、元気で明るくてこちらまで楽しくなってくるんだ…」

佐藤太郎の言葉にいつの間にか側にいたユリアが同意した。

「分かります!リアって一緒にいると元気になれるんです!」

「分かってくれるか!魔法少女ユリア!」

「はい!佐藤さん!」

なんでそこで友情芽生えてんだよ。

ちょっと引き気味で見ているとお互い握手をして私について語り合った。

なんでやねん。


そんなこんなで佐藤太郎と由利亜の謎の友情が芽生えたところで雑魚敵もすべて倒し終わりあとは佐藤太郎だけなのでさっさと帰還することにした。

関わりたくないもん。

「まったく、やってられませんよ」

基地に着いて開口一番文句を言うとメンバーから擁護が入る。

「佐藤さんはそんなに悪い人ではないと思いますよ」

「えっ!?どうしたんですか!?ミサキさん!!」

「そうですよ、どうせ付き合ってる最中も山田さんが何かやらかしたんでしょう?」

「何?なんでみんな佐藤太郎の味方なの!?」

「山田さん、ピーマンを憎むのも許されますが、佐藤さんも許してあげてはいかがでしょうか?」

「みんな!買収されたの!?」

あいつ金だけはあるもんな!!

「そんな…温泉地の宿泊券数種類貰っただけですよ」

「敵側が観察用に録画していた兄さんのBD貰っただけですよ」

「ピーマンへの憎しみを語り合っただけですよ」

「思いっきり買収されてんじゃねーか!!」

そういえばピーマン苦手だったな、あいつ。

やばい。正義の味方である魔法少女達までもが佐藤太郎側になってしまった。

いいのか、それで。

果たしてこれからどうなるんだ……。

とりあえず買収された奴らはしばいておこう!


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