「泣いて、笑って、」
花蜜 苓
第1話
遠い、遠い山奥から朝日が姿を現し、また、遠い、遠い山奥へと姿を消していく。
時の流れが感じられる瞬間を私は見逃さなかった。青く、琥珀色に染まる世界が、私の心臓を脈打たせた。
「なぁ、なんか、空綺麗じゃね~?」
「ん~。空?」
「ほら、あれ。」
「はは。やべぇ、何かすげぇな」
「ああ。綺麗だな、」
この瞬間が続けばいいのに。最後は、みんな笑っているかな。泣き笑いたいな。私の心臓がそう言いたそうだった。
「今日の日のことは、一生忘れねぇだろうな。」
そう呟いた人がいた。
それに熱く共感するように、
「絶対忘れるわけないわ。」と微笑むような声で、青く、琥珀色に染まる世界に叫んでいるようだった。
この世界に、同じ空は二度と来ない。タイムマシーンに乗って、同じ空を見たとしても、きっと同じ空を感じることはできない。私の隣に大事な仲間がいて、尊敬する人の隣に私たちがいて、はじめて見ることのできるものなんだ。目の奥が熱くなるのを感じ、私は目の前の世界に背を向けた。途端、背中に冷たい風が流れ、その瞬間を体に刻み込むかのように、また、世界を見上げた。
”隣にいる奴が明日も隣にいるとは限らない。”
そんなセリフが私の脳裏を宿った。
「泣いて、笑って、」 花蜜 苓 @KamitsuRei
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