作品が浅いと言われて小説を書く気力が失せた話
四年前に「一無所有(異世界中華街)」を執筆していた頃、末期ガンで余命一年だった父が祖父母を虐待していた。
私たちは違う家に住んでいたが、祖父母の認知症が進行して自分たちだけで住むのが厳しくなり、一週間に一度は必ず食料を届けたり排泄物の処理をしたりしていた。
父は仕事に加え、自分自身も抗がん剤で延命治療をしている中で祖父母の介護までやらないといけないのがよほど苦しかったようだった。父は私を祖父母の家に連れていくと、祖父母に向かって何度も大声で怒鳴り散らしたり、時には殴った。
父は家に帰ってきても母や私に当り散らした。叫んだり、暴れたり、どうしようもなかった。
私は彼らの年金を毎月一、二万ほど必ず渡されて、無理やり父の手伝いをさせられていた。
当時ひどいうつ病を患って無職だった私は都合よく介護役になった。
金や薬の飲み忘れの管理、たまに通院している病院に連れていったりもした。
逃げればいい、と思うかもしれないが、当時の私は謎の顎の激痛で誰とも話せなくなってしまい、家に引きこもっていた(詳しくはここに https://kakuyomu.jp/works/16817139558080486014)
眠りは浅く、寝れば寝たで悪夢を見て、せいぜい自殺することを妄想するぐらいしか考えられない。そんな毎日だった。
結局、一年ほどたった夏のある日、私は着の身着のままで実家から逃げ出した。
多少の服やパソコンだけ詰め込んだバッグを自転車に積んで何キロも走った。
これで自由になれたと思った。
同時に、とてつもなく苦しかった。
どうして自分がこんな目にあうのだろうと思った。
その後一年ほど友達の家を転々としたり、働いたり、滅茶苦茶な生活を続けて実家に戻ったころ、父はガンで亡くなった。
やっと悪夢が終わった、という感じだった。
しかし、このことについて話したとき、いろんな人に「お前のせいだ」と言われてしまった。
実際こうなってしまった原因の一つは私自身の能力不足だというのは否定できない。
私は別に小説の主人公でもなんでもないのだ。
何か問題が起きたとき、全てをスマートに解決できる人間なんてそうそういない。
私の父が親の介護で狂い、ガンで死んでいったように、生きたくもない人生を苦しく生きて死ぬだけの人も多いのだ。
私はたまたまそういう側にいただけだ。
作品が「浅い」という批判が来たので言い訳する。
あの小説はこういう状況で書かれたので、私自身の人生が節々に反映されていると思う。ファンタジーとしては浅いのかもしれないが、要するにただの私の体験した現実を(そのまま綴るのでは面白くないので)ファンタジーという形に落とし込んだだけである。
うつ病で執筆できなかった期間含め、合計で三、四年の歳月を費やしたが、私はただ小説を書くことで「生産的なことをしているという錯覚」がほしかっただけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます