(4)
「嘘だろ……」
どう考えても、ヤクザか半グレか……もっと
「誰じゃ、フザケた真似しとっとはッ⁉」
俺が、窓を開けて、上の階に延びてるケーブルを凝視めていると……入口から怒鳴り声。
振り向くと……全身を獣毛に覆われているが、獣人と呼ぶには、妙に人間っぽい顔の……特殊メイクが発達してなかった頃の白黒映画にでも出て来そうな狼男がゾロゾロと……。
「魔法」で「探って」みると……どうやら、防犯カメラの映像から、俺が「魔法使い」か「超能力者」だと判断したらしく、「敵対的」な「魔法」「超能力」「心霊」の
この人数と……上のフロアも、この部屋と同じ位の広さなら……。
「はぁ⁉」
「えっ?」
「い……いや、マズかですよ……もし……あのクソ野郎が上に行こうとしちょるなら……」
少なくとも1人は勘がいい奴が居たようだ。
俺は窓から出て……そして、ある「魔法のシンボル」を強く思い浮かべる。
と言っても……普通の人間が可能な「強く思い浮かべる」のレベルを超えた……自分自身の心の中のいわゆる「無意識」のレベルまでも制御する為の訓練を行なった者のみに可能な「極めて強力な自己暗示」に近いモノだ。
「うおりゃあああッ‼」
絶対に後で筋肉痛になる。
下手したら……トイレに行ったら小便がコーラみたいな色になってる。
今晩必要になるのは……鎮痛剤系の違法薬物だ。どうやって手に入れればいいか……見当も付かないが……。
ロープ代りにした監視カメラから延びたケーブルは……予想通り、俺の体重を支えきれずに、あっさりと千切れる。
しかし、その寸前に、ギリギリで上の階の窓に手が届く。
下を見ると獣人の内の1人が窓から顔を出し……。
「死ねえッ‼ ボケがぁッ‼」
「えっ? ぐえッ‼」
俺は、獣人の顔を蹴り、その反動で……。
ジャンプとさえ言えない、ほんのわずかな上昇。
だが……それで十分だ。
迂闊にも……下からする変な音の原因を見ようとしたらしく、五十ぐらいのガタイのいい男が窓を開けて顔を……。
「ぐえっ?」
「おっさん、一緒に落ちたくなけりゃ……俺を支えてろ……」
「ごごごごご……」
俺は、上の階のガタイのいいおっさんの首を掴み……。
一見すると、普通の民間企業の事務所に見える部屋に突入。
予想通り、部屋の中には、
「どこだッ⁉ どこに有るッ⁉」
多分、このおっさんも獣化能力者だろうが……獣化してない状態では、「火事場の馬鹿力」を無理矢理引き出す「魔法」を使ってる俺の方が単純な筋力だけなら上だった。
俺は、おっさんに馬乗りになり、何度も何度も、おっさんの顔に鉄槌撃ち。
「な……何が……?」
「下の階の防犯カメラの映像は……どこに記録してる?」
「ああああ……」
おっさんは、ネットワーク機器や小型のNASが何台も有るスチール棚を指差す。
「ありがとよ」
俺は、下の階の店長が持ってた拳銃をスチール棚の電子機器めがけてブッ
くそ……
「お……
下の階から戻ってきた獣人系のチンピラどもの素頓狂な声。
まぁ、自分の上司が血まみれの面白顔左衛門と化して床に転がってりゃあ、そう云う反応になるだろう。
「ちょっと……頼むわ……」
そして、その時、既に俺は「使い魔」を呼び出し終っていた。
俺の「魔導師名」の由来である漆黒の
霊視能力を持つ者には……そう見えるだろう。
俺の忠実な分身にして子分どもは……獣人の群に襲いかかっていった……。
まずは……2体の使い魔の内、純粋な攻撃力で勝る「黒い太陽」が護符を持ってない約半数をグロッキーにした上で、「白い悪魔」が持ってる特殊能力の1つで操り同士打ちをさせる。
それを生き残った奴らも……奴らが持ってる護符の効力では「黒い太陽」の攻撃を一〇〇%打ち消すのは無理だ。そして、同士打ちによる体力の消耗で、多めに見積っても2〜3発の攻撃でブッ倒れるだろう。
「お……おい……何しやが……」
「げげげげ……」
「やめ……ぐへっ?」
とりあえず、俺の「使い魔」と獣人どもの戦いは……概ね、俺のプラン通りに進んでいた。
何で、携帯電話買うだけで……こんなに苦労すんだよ?
自分でも何が起きてるか、おそらくは判らないままに次々と倒れていく獣人どもを眺めながら……俺は妙に呑気な事を考えていた。
「親分さん……生きてる?」
「あああ……」
「あのさ……合法なヤツじゃなくていいから……痛み止めと消毒薬と抗生物質有る?」
拳にダメージがいかない殴り方をしたつもりだが……俺の手も思いの外傷付いていた。
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