第一章:悪いやつら
(1)
この状況を小説にして、小説投稿サイトに投稿したら、ジャンルは何になるだろうか?
強いて言えば「ざまあ」モノだろうが……これを「ざまあ」モノだと言い張ったら、読者から「鉄の暴風」の如きブーイングが来るのは間違い無しだ。
自分でやった事ながら、ここまで、爽快感とは無縁でみみっちくて陰惨で倫理的に許容出来る点が1つも見当らない「ざまあ」も、そうそう無い。
「おい、家に有る現金を全て出せ」
雇い主の一家と「同僚」達に「精神操作」の「魔法」をかけ、俺と云う「使用人」についての記憶を無意識の深淵に封じ込め、俺の言う事に完全に従うようにして、近所の連中その他に、怪しまれない為に、一定時間後に正気に戻るようにした。
本当なら、
しかも、精神操作ってのは……「超能力」であれ「魔法」であれ、一般に思われてる程、万能じゃない。
例えば、相手が元から自分を危険視してる場合に「俺を怖がれ」と云う「精神操作」を成功させるのは簡単だが、相手が自分を舐めてる場合に「俺を怖がれ」と云う「精神操作」をやっても、成功率は著しく下がる。
俺を「使用人」だと思ってる、このクソ百姓を「精神操作」で俺に服従させるのは……とんでもない手間だった。
疲れた……。
「魔力」「気」「霊力」を消費しただけじゃなくて、久し振りに頭をフル回転させて精神集中を続けなきゃいけねえ「職人芸」を数時間連続でやったせいだ。
「は……はい……」
俺を雇っていたクソ百姓一家のクソ親父は……座敷の仏壇の裏に隠してた小型金庫を取り出して空け……。
「案外、少ないな……」
「はい……他の事はクレカか電子マネーか手形で済ましてるので……これは……奴隷どもへの……給料として銀行から降した金です……」
ドゴオッ‼
「ぐ……ぐえ……っ」
「魔法使い」には自制心も必要だ。
自制心ってヤツをどうしても身に付けられねえ奴は……生まれ付きどんだけ
だが、これは怒ってもいいだろう。
この野郎は、俺を「奴隷」だと思っていやがった。
俺は蹴った。
蹴った。
蹴った。蹴った。蹴った。
蹴りまくった。
踏み付けた。
踏み付けた。踏み付けた。踏み付けた。
踏み付けまくった。
何度も何度も、クソ親父を蹴って踏み付けた。
それにしても……後味が悪いったら、ありゃしねえ。
「同僚」どもの事は……何とも思っちゃいねえが……つい少し前の俺と似たような境遇の連中の給料を横取りしたようなモノだ。
「まぁいい、お前の部屋のPCを立ち上げて……パスワードを入力しろ」
「ぱ……パスワード?」
クソ親父は……口と鼻から血を流しながら……ポカ〜ンとした顔で俺にそう訊いた?
「おい……パスワード入れなくても」
「はい……すぐ使えるようになってます」
俺は……天を仰いだ……。
どうやら俺は、とんだマヌケに奴隷としてコキ使われてたらしい。
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