第113話 本当にあった、怖い話

 あれは私が小学生低学年の頃でした。お盆を過ぎて、少し涼しくなってきて、家族みんなでテレビを観ていた記憶があります。


 時計の針は九時を過ぎた頃でしょうか? すっかり日が暮れて、そろそろ寝る準備をしなくちゃと焦っていたところで、急に我が家のインターフォンが鳴りました。当時はまだ、インターフォンのことをピンポンと呼んでいましたっけ。


 それにしても、こんな時間に?


 寝間着のまま、親父さんが玄関を開けると、どうやらすごいお婆さんの声が聞こえてきます。


「夜分にすみません。海は、どっちの方向でしょうか?」


 なんとなく不気味な気配を感じたのか、親父さんはお婆さんを外に出して、玄関を閉めました。姉はすぐに鍵をかけます。


 十分ほど過ぎたと思います。親父さんがとても疲れた顔で帰ってきました。


「どうしたの?」


 早速姉が質問をします。


「海はどこか聞かれたんだよ。だから、国道に沿って、あっち側に向かってくださいって何回か言ったんだけど、なかなか話が繋がらなくて」


 この時、姉に嫌われているはずの私を、姉が震えて抱きしめました。


「夜に海に行くって、なんの用だろう?」


 その後、厳重に戸締まりをして、さっさと寝ることにしたのですが、初めて姉が私のベッドに潜り込んできました。


 今日だけ、って言うけど、まぁいっかぁ。と。


 つまり私は、夜に海に行きたいお婆さんよりも、姉のリアクションの方が怖かったのですよね。


 だって、お婆さんは親戚でもないですし、この辺の人でもなさそうだし、外灯すらついていないし。


 どこに向かって、何をしようと、私には関係なかったのです。


 ただ、途中寝苦しかったのか、姉が自分のベッドに戻ってくれたので、ようやく体を休めることができました。


 ちなみに、家から海はかなり遠いところにあります。


 これが、本当にあった、怖い話でした。


 つづく

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