第16話 前の子と軍手の話

 さて、今回は話題たっぷりな前のしば犬の子のエピソードを書いて行こうと思います。


 いやー、寒くなってくると思い出すのですよ。


 親父さんがね、寒いからって、前の子のお散歩をしてきてくれたのですよ。軍手をして。


 前の子はすっごくちっちゃい頃にうちに来て、それこそ通りすがりの若い女性がかわいー、かわいー言ってもらえるようなコロッコロした幼少期でした。


 なのですが。忘れちゃいけません。やんちゃなのです。


 なので、親父さんが彼のお仕事を拾うため、一旦軍手を外した瞬間、軍手を咥えるわけですよ。返して? って言っても、白目をむいて唸るんです。でも、ちっこいんですよ。


 で、そんなコロッコロしたちっこいしば犬が軍手咥えていたらかわいいじゃないですか(親バカは承知の上です)。なので、やはり若い女性にかわいーって、撫でさせてって言われるんですけどね、やっぱりこの子、唸るんですよ。軍手を咥えている以上、噛み付く危険はないのですが、やはり事故は避けたいので、お姉さんにはごめんなさいして、うちに帰ってきます。


 で、私が出迎えると、その子がだーって走ってきて、今度は私の目の前で軍手の取り合いをしたいらしくて、白目をむいてかたまっています。


「ご飯用意してあるよ?」

「ゔー!!」

「食べたくないの?」

「ゔゔー」


 そんなやり取りがおよそ三十分ほどつづきます。いやもう、だって、楽しいと思ってやっているんでしょうから、つきあいますよ。


 最後はね、口元にビーフジャーキー持って行って、軍手と交換して一件落着なんですけどね。


 もう本当に、いろんな子がいるんだなぁと感心した出来事でした。


 つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る