第二章 魔王ライフってもしかして快適?

~序~

 城下に鍛冶屋、武器屋、防具屋、服屋が出来たことでサロやシュクラの身なりが大きく変わった。 


「おお! かっこいいね! シュクラ」


 「光栄です」


 シュクラの白磁はくじを思わせる皮膚をまとったのは美しい白銀の鎧であった。鎧の内側には毛皮を着ている。超耐寒装備である。


 そしてシュクラはサークレットも付けた。魔力を増大させるための基礎的な装備品だ。


 「サロも鎧付けますか?」


 「いいよ、僕はこの『黒闇のローブ』を気に入ってる」


 それは冬のシベリアの大地を表現した夜と闇の威容をたたえたローブであった。しかも装備者の魔力を増幅させる。人間が着ると力を吸われる魔の装備だ。深緑色の「闇緑の涙」の鎧と兜も気に入った。まあ鎧や兜を着る場面になりたくはないが。装備するとまるで自分が甲殻類の動物になったかのように自分の躰と一体化する不思議な魔の装備だ。装備をはがす時は音もせず普通の躰に戻る。なんと不思議な鎧と兜なのだ。なおこの鎧に玉魔石なるものを埋め込むとさらに強化出来るという。とはいえ人間が間違って着込むと死ぬので厳重に管理せねばならない。とりあえず地下室に置こう。


 「もうすぐ太陽が全く顔を出さなくなります。その前に初代魔王城をもっと見学しましょう」


 「賛成」


 「では、熊魔族のポポラにヴォルド全体の留守番を頼みます」


 「副官、了解しました」


 「初代魔王城はずっと南にあります。南と言ってもこの時期は凍土ですよ」


 「了解!」


 二人は空を飛んで初代魔王城に向かった。


 「ここが初代魔王城です。今度は降りてみましょう」


 「うん」


 二人は降り立った。


 「本当にここは土台以外ここも残ってないね」


 ようやく薄明かりが射しこむ。一瞬だけ光が支配する時間となった。


 「ええ、ここの一階に魔王の謁見室があるのですがいざ戦いとなると地下四階の真の謁見室で戦います」


 (地下? 真の謁見室!? すげえ! 本物の魔王城じゃん)


 「おそらく地下は爆発に耐えて残っているでしょうけども」


 (だから地下にも作ったんだよな?)


 「地下には電撃床・毒床・溶岩床など人間が下手すると即死するトラップも作ったのですが初代勇者らは乗り越えてしまいました。浮遊魔法で」


 「だめじゃん!」


 「でもバロニアが復活させた初代魔王城討伐の時はこちらも城の作りが分かってたので勇者・魔王共同軍は逆に行軍が楽だったのです」


 「……」


 「地上は五階まであります」


 (地上五階部分には何があったんだろう?)


 「二代目魔王と戦った勇者のために作った武器と防具はここの地下に収められています。実は二代目勇者の武器と防具は我々が作ったのです。呪いなしの装備では最強のものを作りました」


 「あ、もう太陽が……」


 サロは見上げた。魔が支配する刻だ。本当に一瞬だけの光だ。


 「まもなく太陽も出ない闇の世の季節になります。この時期は寒波もすさまじいのでとりあえず屋敷をもっと良くしてからここを再建しましょう」


「了解、じゃあ戻るぜ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る