勇者「今日がお前の命日だ」メスガキ「ふ〜ん……ヒィィッッ!?」

@kz_sasara

わからせ

「六魔将『傲魔龍』、今日がお前の命日だ!」

海を思わせる青い目、砂浜のような淡い金髪の『勇者』は神器の聖剣をこちらに向ける


「私の魔法を馬鹿にしたのを後悔させてやるわ」

雪のように白い肌と髪に朱い瞳の『賢者』が確かな怒りと共に膨大な魔力を練り上げる


「ドラゴンの鱗を砕いたこの拳、味わいなさって頂戴!」

黄金色のドリルヘアとゴリラじみた筋肉の『拳聖』が闘気を迸らせながら関節を鳴らす


「クソガキがぁ…ゼッテェ、ブッ殺す!!!」

元魔王軍で全身薄い赤い鎧の『血錆の騎士』が自分の身体よりも大きい鉄槌を引きずる


私、メイ・スガラギは人生最大のピンチにある


突如の自分語りだが、私は転移者だ

いわゆるなろう系のチート勇者みたいな特典を貰っている


『キャラクリエイト』

ステータスの伸び率の設定

種族、外見の設定

好きなスキル×3の取得


主に三つのことができた普通に凄い特典だ

まず、ステータスの伸びが設定できるため、努力の方向性が確定する


次に種族……これは強い種族選べばええやろって、龍人にした

筋力はもちろん、魔力とかも生まれつき高い


最後にスキル…これも定番な『アイテムボックス』と『天性の肉体』、『魔の泉』、まあ、フィジカルとファンタジー要素の強化だ


外見は、個人的な趣味で身長145cmにしたし、胸囲も控えめのロリだ

真っ赤な髪と金色の瞳、最高の出来だった


そこからだ……趣味全開で「メスガキ」のロールプレイをしたくなった

前世は自分を殺して、常識的に振る舞ったための反動か、ネトゲとかでは基本煽りプレイが大好きだったし、相手の憤る様子を想像すれば飯2杯はイケる


そのノリで、こっちの世界でも、よっわ〜い♡、ザーコ♡

などなどを口走りながら相手の長所を才能で打ち負かし、ボロボロになって動けない相手の頭を踏み踏みして遊んでた


いろんな場所で暴れ回って、『傲魔龍』なんて呼ばれるようになったころ

魔王軍のスカウトが来た


最初は同じように幹部だの、魔将だのボコしては煽ってた

そうしていると、『魔王』が直々に分らせに来やがった


返り討ちだ!みたいな感じに調子付けたのは一瞬だけで

後は本当に死を覚悟するほど魔法を撃たれ、今でもその辺りはドロドロに溶けた岩盤でいっぱいになっている


結局魔王軍に入ったわいいものの、王都襲撃したり、単騎で軍を崩壊させている内に『勇者』とぶつかり、数回の死闘を広げ、前半は圧勝、後半は辛勝で勝ち逃げをした


賢者を輩出している、魔法学院にもちょっかいをかけに行き、学園長の像を壊して、その本人の魔法を全部肉体だけで跳ね返し、図書館を焼き討ちした

その時の学園長の弟子である現『賢者』のこともついでに煽った


魔王城に攻め込んできた勇者パーティーとの戦いで、

格闘家スタイルの金髪ドリルをボコし、人間の肉体って、貧弱ぅ〜♡とか煽ったら次に出会った時には体の厚みが倍増してたし、力負けし始めた


同じ『六魔将』のイキリ野郎も、勇者パーティーの成長へのムカつきの憂さ晴らしに鼻をへし折ってやったら、勇者パーティーに寝返りちゃったし


「ふ〜ん、こんな小さな女の子にも群れないと挑めないんだ〜」

そんな焦りも熟練したメスガキロールプレイの妨げにはならない


「うっわぁ♡」「恥ずかしいないのぉ♡」


顔に青筋が入る勇者一行を見て、快感と恐怖のハーモニーに震えながらも脳内で活路を探していた


何たってここは魔王城だ、つまり最強の『魔王』がいる!

へへへ……


「メイちゃん、こわ〜い」

煽りワードを発しながら、裏で転移魔法を準備する


「だからぁ〜♡、バイバイ!」

設定は玉座がある、魔王様の部屋

有り余る魔力を注ぎ、空間を突き破る


ーーーーーーーーー


紅い光に照らされた広間

豪華だった装飾は面影を少し残して、焼け焦げていた

所々床が抜けてたり、壁に穴が開いていた

天井も吹っ飛んでしまったようで、赤い月がよく見える


なによりも、部屋の中心たる玉座で、一人のツノの生えた男が眠っていた

致命傷は恐らく胸にある大きな剣痕だが、折れ曲がった右腕、顔の半分を覆う火傷、潰れた左足、そのどれもが激戦があったことを示している


「ま、魔王様?」「えっ?ウソ……」


「……。」

満身創痍の彼の顔はどこか満足していた

恐らくは、全力の応酬の果てなのだろう


カタン、カタン


複数の足音


ガガガガガガ


重たい何かを引きずる音


ジリッ


魔力を感知する器官が結界が貼られたことに気づく


「言っただろ、今日がお前の命日だ。」

極めて爽やかな声で、日常会話のようなトーン


背筋が凍っていく


すぐさま全魔力を用いて転移を試みる


「二度目はあり得ませんわ。」


普段あまり使わない翼を全力で広げ、跳躍


ドコン!!

全身に走る衝撃、思わず血反吐を吐いてしまう


「ふふふ、どこへ行くおつもりですの?」


ハンマーの先が地面を削る音が聞こえる


「ヒャッハアアアアア!!」

「どこから、潰されテェ?」


下腹部がジーンと熱くなる


「ぃ、ヒィィ!?」

口から溢れる悲鳴


「うっっわぁぁ、漏らしてるゼぇ!」「無様ね」

「お似合いですこと」「せめての慈悲だ、一瞬で終わらせよう」


「ゆ…ゆるッッッ!?


そこで二度目の人生が終わった

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