卵がわれた日
おふとぅん侍
第1話
仕事で上手くいかなかった日
頭の中では「ああすればよかったのかもしれない」「こうすればよかったのかもしれない」と戻ることのできないif線がグルグルと回っている。
なま卵が床に落ちた
残り少ないキッチンペーパーで床を拭きながら「ああ、手から卵が滑り落ちなければ」とか「調理台に置いた皿を片付けていれば」なんてグルグルしてくる。
そんな時、スマホの画面から「電話していい?」の文字と、着信表示が映る。
すぐに手を伸ばす。
愛しい「もしもし」の声が聞こえるや否や「卵がわれた」と答える。
ゼロコンマ数秒の沈黙があってから
「たばこ一本分じゃないか」って。
「高いよ」と嘆くと
「それじゃあ、ブラックサンダーだ」って返ってくる。
「これ、160円で売ってた卵なんだ」と言うと
「それじゃあ、よっちゃんイカだ!」って。
ついついおかしくなって笑ってしまう。
「ま、臭いし片付けは面倒だよなあ」って
言ってくるから「そうなんよー。あ!今日の競馬さぁ!」なんて落ち込んでた気分もどこかに飛んでってしまう。気付けば1時間近く話しながら笑っている。
そんな彼に今日も救われた。
卵がわれた日 おふとぅん侍 @oftn_36rai
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