異世界奮闘記

ごまだれ

第1話 前編

頭が痛い。


非常に頭が痛い。いやもう頭だけじゃないな。全身が過労により悲鳴をあげている。


今日何日だっけ?会社には泊まりこみで仕事して6日は経過してるのは確実なはず…。




俺、胡桃坂隆二は働きすぎにより疲労困憊状態だった。


どうしてこうなったんだろうか。ふと考えてみるも思い当たる節はひとつしかない。人生に歯車があるのなら狂ったのは間違いなく大学生になってからだと思う。



自分で言うのもなんだが俺は幼少期から何をしてもそこそこ器用にできる人間だった。



そこそこいい高校卒業してからは特に夢を持つこともなく、近所の私立大学に入学。

だが、夢を持っていない自分にとってそこは場違い感が否めなかった。


1回生はなんとか留年しないよう単位を取ったものの、2回生からはそれぞれの学科に必修の専門科目などが入ってくる。夢や目標を持って入学したわけでもなく、授業を聞いても「?」しか頭に浮かばなかった自分が頑張れるはずもなく。



そこからは完全に堕落した日々だった。



1回生に始めたバイトは学生にとって本分の筈である学業と立場が完全に逆転した。



いつの間にかバイトを中心にした生活になった。午前中は眠り、午後起きれたら午後のみの授業に行き、夜はバイト。そして朝は寝過ごす。


典型的なダメ大学生の日々になってしまっていたな。


数少ない友人たちにも心配されてたな…。


わざわざ家にまで来て課題を持ってきてくれたりとホントいい奴らばっかりだった。


勿論、こんな生活している自分には彼女はおろか女の友人すらいなかったが。


当然そんな生活が長続きするわけもなく、私立ということもあって大学の授業料免除を受けていたわけだがそれらも打ち切られ、授業料の支払いが増えたことを不審に思った両親にバレてしまった。



たくさん怒られたがそれでもこんな俺に通い続けていいと言ってくれた両親は本当に子供を愛してくれていたんだと思う。親の鑑だな。





結局大学は2回生の後期いっぱいで辞めた。両親にも散々、

「ここで辞めたらどうなるか分かってるのか?」

「お前の経歴に一生残るキズが出来るんだぞ」

「辞めてどうするんだ?働くのか?中退者なんか欲しがる会社があると思ってんのか?世の中舐めすぎだ!」



今思えば両親の言っていたことは全部正しかった。確かに大学を中退した経験もノウハウもない20歳のフリーターなんかどこも欲しがらないだろう。


それでも正直これ以上通う気のない学校のために高い学費を払って貰うのは罪悪感があった。何浪かして通うことはできたがそこまでの重荷は自分には背負えなかった。中退してからはお世話になった方々に謝罪にまわった。


 


大学もバイトも辞め、両親から有難いお灸を据えて貰った後、自分はある求人に応募する。



万が一働き始めても生活習慣すらままない自分はきっと会社にも迷惑がかかる。



そう思った俺はまずこの腐りきった自分の根性を叩き直すことから始めようと思い、修行という意味で応募した。




動機としては相応しくない。










何を隠そう、自衛隊である。




 





…今更だがよく自衛隊に1年行ったと思う。


もうキツかった。あそこはキツすぎる…。


いや、キツいのは承知の上で行ったのだが言葉では表せない。訓練も勿論つらいがなんというか精神的にくるものがあったな…。二度と行きたくないな。



まあ1年もいたおかげで、目覚ましなんぞ使わずに起きることなど造作もないくらいには自立した人間になって帰ったと思う。



それから22歳になった俺は就職活動を始め、総合販売職に応募し、採用された。この前26歳になったから4年目ってところだろうか。


自衛隊で体力面を鍛えててもそれ以前に中退者というレッテルがある俺には面接官の一言一言が心に刺さった。精神面ではまだまだだったな…。世の新卒たちが苦労するのも頷ける。



まあこの仕事は大学のアルバイト経験を活かした仕事だから比較的しやすい。が、昇進することは不可能とは言わないがかなり難しい。ひとえに「中退」してるからな。




そんなこんなでフラフラ歩道を歩いていたら後ろから悲鳴が上がった。…こちとら2時間睡眠なのだから頭に響くことはやめてほしい。



文句のひとつ言いたい気持ちで振り返った時には、もう全てが遅かった。


トラックが歩道を横転してきていた。


多分17t級くらいあるかなり大型だ。ぱっと見ただけだが親戚に大型トラックドライバーがいるからだいたい分かる。


この非常時にも度重なる疲労で不思議と何も感じなかった。



あぁ〜明日の会議の資料作んないといけないのに。


運転手寝てんじゃねぇかよ…。俺だって眠たいのによぉ〜。


 






どうでもいいことを考えながら誰かの悲鳴を最期に俺の意識は途絶えた。





————————————

前作の更新は少々お待ちください(^◇^;)

手術しておりまして少し病み上がりで御座います。気長に読んでいただけますと幸いです。





 


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