殺し屋 慈悲心鳥
来宮 奉
地方イベント会場の殺人
第1話 新しい仕事
仕事を転々とする彼女は、住む場所も同じように転々としていた。
このアパートも借宿で、明後日か明明後日には退去するだろう。
だから部屋には最小限の荷物しかない。
身軽に転居を繰り返すが、それでも新しい職場に赴くときは緊張する。
人間関係や仕事内容、予想外のアクシデント。新しい環境にはつきものだ。
佐久本の次の仕事は、地方の中規模ライブ会場での警備員だ。
警備員のバイト経験は何度かある。
だがこの会場は初めてだ。これまでとは勝手が違うだろう。
当日の行動に支障を来さないよう、マニュアルと、自作の行動予定表を頭に叩き込んでおく。
明日持って行く荷物も再確認。
全ての確認を終えてから、佐久本はようやく軋むベッドに横たわり、眠りについた。
◇ ◇ ◇
翌朝、時間通りに起床。
軽く朝食を済ませ、身支度を進める。
佐久本玲奈。24歳。
背は女性平均よりやや高い程度で、痩せ型。実年齢より若く見られることが多かった。
警備員の仕事だ。必要以上に自分を飾り立てる必要もない。
佐久本は薄めのメイクを済ませると、肩ほどまで伸びた栗色の髪を後ろで1つ結んだ。
それから戸締まりを確認。
手提げ鞄に入門証と仕事マニュアル。ペットボトルといくつかのお菓子が入っていることをチェック。
スマホ、財布、鍵も持った。
「よし。行こう」
佐久本は意を決して、新しい職場へと向かう第1歩を踏み出した。
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