SCAR=TALE
しまうま
プロローグ
「おいおい、何の騒ぎだ?」
川沿いの村を訪れた1人の老爺は村人達の塊に話しかけた。
目つきは鋭く顔には大きな傷。老人とは思えない屈強な体と逞しい髭は古い神話の神を彷彿とさせる。
「オリバ様。それが……。」
村人達はオリバが通れるように道を空けた。
その中心にあるテーブルに一つの籠が置いてある。
オリバはそれだけで事態を察した。
「落とし子か……!」
駆け寄って籠の中身を見ると白い布に包まれた赤ん坊がすやすやと眠っている。
オリバは赤ん坊を抱きかかえるとその卵のような右頬を優しくなぞった。
「荊の紋様か……。」
赤ん坊の右頬には荊を模したタトゥーがされている。その美しい柔肌には似つかない禍々しく痛々しい代物だ。
「やはりあの落とし子ですか!? 早く殺してしまいましょう……!」
「そうです! 厄災が……! この村を守らないと!!」
それぞれが必死にせき止めていた恐怖が次から次へと溢れていく。
悪意など微塵もないただ純粋な恐怖と、残酷な義務感が赤ん坊に向けられた。
「オリバ様!!早く戻してください!!籠ごと火をつけます……!!」
その異様な空気を察してか、赤ん坊は眠りから覚めると、キョトンとした顔でオリバを見つめる。宝石のようにキラキラとした緑色の瞳。
そして、その小さな手をオリバの髭へと伸ばすと、無邪気に笑ったのだ。
「そうか……。笑えるのだな……。」
オリバは天高く赤ん坊を掲げると声を張り上げだ。
「落とし子は私が預かるッ!! 厄災など、私が押さえつけてやるッ!!!」
暖かい日差しが照らす、美しい花の咲き誇る季節のことであった。
【厄災の落とし子】
頬に何らかの紋様が刻まれた赤子は古くからその存在が確認されていた。伝承、神話。その捨て子の言い伝えがない地域は存在しないと言えるほど広く知れ渡った存在である。
気がつけばそこに捨てられている人種も性別も紋様もバラバラなその赤子はどの物語にも、厄災そのものとして描かれていた。
そして、赤子は青年へ。
時は流れる。
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