第14話 話し合い
今までサブマスターとして、色々丸投げしてきたリリスとズレを感じた俺は、ロキも含めて改めて話し合うことにした。
「リリス、まず俺のゴール目標として、女神の消滅と家族の再生がある。」
「はい、存じております。」
「そのための手段として、現地の魂を収穫して邪神から報酬を貰うことになってる。」
「はい。」
「その魂、収穫物がどうやら少ないようなので、自分達で増やそうとしている。これはこの前話したな。脳筋国家を乗っ取って大国を作ろうって話だ。」
「はい、イスカを乗っ取る計画ですね。」
「そう、これがゴールまでの道筋だな。これを達成するのに色々と別に手間が掛かるのは今は横に置いて、どれだけのペース、優先度でやるかって話。」
「MPで300億貯めようとすると170年掛かるって話の時にも軽く言ったけど、俺は本気で500年くらいって見積もってたんだよ。それでも地球時間だと125日だろ?4ヶ月で戻ればカルト共もまだ生きてるだろうし、知り合いだって大して変わらない。一応、神クラスをぶっ殺そうとしてるんだからそれぐらいは覚悟してたんだよ。」
「それに、木村も老いてるらしいけどまだこっちの世界にいるみたいだし、どんだけ強いか分からん。こっちが負ける可能性だって無いわけじゃない。」
「俺はこういう風に考えてるから、何か無駄なことに時間とかMPを費やさない限りは結構気長に構えてるんだよ。家族の情報保存は責任持って請け負ってもらったから時間掛かっても大丈夫なはずだし。急いで拡張して木村にバレて攻められるとかの方がよっぽど怖い。マジで急いでないんだ、不老で時間はあるし、無駄に力を使うとか以外は何したっていいと思ってる。」
「そう…なのですね。ではマスターはハチから得られる報酬もそれほど急いでいないと?」
「あー、そうか。それでリリスは急いでたのか?確かに魂の力がどれだけ強いエネルギーになるのかは気になるけど、どうせいつかは手に入るだろ?現にリリス1人で巣の中心部まで入り込んで普通に帰って来れるくらいなんだし。」
「あの…、私の考えではマスターはハチの巣の攻略を急いでいるのかと思っていました。異世界に来る前から、ハチの巣攻略を意識していたようですし、魂の力が欲しいものだと…。それに地球の人間はいつも急いでいると私の知識の中にありまして…。」
「人間が急いでる?…確かに寿命が無い種から見ればかなり急いでるかもね。」
時間に追われていた現代人としては、妙に納得してしまった。ロキも黙って頷いている。
(なるほどね、生まれ持った情報で地球人だった俺も同じように急いでると思って動いてた訳だ。)
「確かに俺は地球人だったし、今も地球人のつもりだけど、もう不老らしいし人間だって言い張るつもりは無いよ。悪魔か天使に生まれ変わる話もしたけど、それにも抵抗は無い。」
「そうだったのですね…。私はマスターを無意識に見下していたようです…。マスターは人間だからこうだろうとか、こうしたがるだろうとかを勝手に決めつけていました…。そこまでの心構えを…、私はサブマスター失格です…。」
「別にそんな心構えって程じゃないよ。家族を生き返らせるとか再生とか言ったけど、多分俺はそこまで大切に思ってた訳でもないと思う。確かにあの時は悲しかったけど、今は怒りの方が強いし、女神とカルトを殺す方が優先順位は上だ。。もう俺の憂さ晴らしの方が先になってるんだよ。俺の人生ぶっ壊された復讐のついでに仇打ちするつもりなんだ。」
「それは…、再生の手段があるから切り替えられたのでは?マスターが薄情という訳では無いと思います。」
「あー、それもあるかもなぁ。まぁでもいいんだよ。家族は再生するけど、もう一緒には暮らせないだろうから、俺の自己満で。」
そう。俺は地球に戻る気が無い。家族の遺体は行方不明にしてあるけど、俺は自殺したことになってるし。家族を再生したら警察の人に頼んで生きてたことにしてもらえばいい。お願いでダメなら脅すだけだし、その頃には実際に色々出来るようになってるだろうし。
「マスターはそれでよろしいのですか?お辛くはないのですか?」
「辛い…?うーん、それはどうか分かんないな。でもそうだな…、他人に興味を持てなくなったかも?興味ってよりは失望?人間の気持ち悪さを感じた気がする。」
「気持ち悪さ…ですか?」
「そう、普通の人って人の家にロケランぶっ放せると思う?軍人とかなら別だろうけど、一般人は出来ないと思うんだよね。でもそれを出来る人間、狂信者がそこら辺に普通に生活してるって考えると気持ち悪いし、怖くない?」
「なるほど、狂信者が理解不能で気持ち悪いのですね。それなら分かります。」
「そうなんだよ、人間に対する失望と理解出来ない気持ち悪さで、地球に執着心が無くなった感じ。そりゃ普通の人が大半だろうけど、そいつらと見分けるのは無理だし。家族の支援はするけど邪魔な奴を消す躊躇いは無くなったかな。」
「その失望は異世界人にも向けられているのですか?地球人よりも更に野蛮な未開人と思われますが。」
「人間ってだけで向いてる。拉致被害者のエルフとかはまだだけど、人間種は普通に下に見てる。でもこっちは1神教でしょ?それならまだ矯正出来るかなって思ってる。」
「そうですね、学が無い分操りやすいでしょうし、こちらの都合の良い教えに捻じ曲げるのも簡単かと。」
「そうそう、それにこっちには奴隷もいるみたいだし、人権意識なんて無いだろうからやりやすくていい。」
「こちらには人権団体なんてものはありませんからね。国際的な繋がりすら無いかもしれません。」
「あー、そっか。貴族もまだなんだっけ。都市の権力者程度なら尚更余裕だな!」
俺がケラケラ笑っていると、リリスも笑っている。ロキは尻尾をユラユラ揺らしていた。
(まぁ話すのはこれくらいか?リリスにも急いでないことは伝わっただろうし。ロキは一言も喋らなかったけど…。)
話の擦り合わせにかなり真面目に話していたのに、人間を見下している話からすっかり和んでしまった。
「まぁこんなところ。俺はそんなに急いでないってことを覚えておいて欲しい。一応国を運営するつもりだから100年単位で時間が掛かる覚悟はしてるよ。」
「はい、マスター。お考えと方針に関してはよく理解出来ました。これからは焦らず、堅実な作戦立案を心掛けます。」
「あぁ、これからもよろしく頼むよサブマスター。」
「はい、お任せ下さい。」
こうしてリリスとの認識の擦り合わせを終えた。これからは俺も丸投げじゃなくて、相談するようにしようと心を入れ替えた。
(そもそもこれは俺の復讐なんだ。手助けしてもらうならまだしも、任せっきりは違うよな。)
もっと自分で考えようと決意したところで、
:システムアラート。侵入者です。迎撃態勢に移行して下さい。
コアから侵入者が入ってきた警告が流れた。
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