ディスティニーシーにて
誰もが知る、日本で有名であるテーマパーク、ディスティニーシー。
私が幼い頃の、ある日の事。
マリエルという人魚のキャラクターが大好きである姉が、それが主役であるマーメイドコンサートに行きたいと、両親にお願いをした。
マーメイドコンサートは、ディスティニーシーの中にある施設の一つ。お金もかかり、混雑しているここに行くためには、両親に連れて行ってもらわなくてはならない。
それを受けて、母は「せっかくだから、次の休みにでも早起きして、二人だけで冒険してきなよ!」と、のほほんとお金を姉に渡した。
姉は大喜びで受け取り、ワチャワチャと電車での行き方や予約券の取り方などを調べ始める。
母はそれを楽しそうに眺めているし、父はこっそりとオススメのグルメを教えている。
その様子を見て、家族の中で唯一の心配性の私は、不安でしか無かった。
「ええ…? 私たちだけで、だいじょうぶかなぁ?」
まだまだ小さい私が両親と姉に訴える。
「お姉ちゃんに任せときなさい! 完璧に連れてってあげるから!」
「あんたたちもそろそろ、自由に遊びにいきたいでしょー? お出かけの練習よ!」
「パパも調べるの手伝うからな!」
盛り上がっている
そんなこんなで、休日を迎えた今日。早朝から眠い目をこすりながら起きた。
用意しておいたお出かけ用の服を着ながら、横目で姉を見ると、隣のベッドでまだボーッとしている。
「マリエルが待ってるよぉ~」と声をかけると、パッチリと目を開けた姉はすぐに着替えを始め、あっという間に準備が出来上がった。
そうして、中学2年と小学4年の姉妹の私たちは、初めて2人だけで、ここ、ディスティニーシーへと遊びに来たのである。
4歳も歳上なのにまだまだ頼りなく、チケット売り場で順番が来て、バッグの中で財布が見つからずにあたふたとする姉を見上げる。
(私がしっかりしないと、いけないかなぁ…)
まだ小学4年生なのに、そう思ってしまった。
心配性ではあるが
入口をくぐって、有名なキャラクターがお出迎えする賑やかさに思わず心が踊ってしまう私は、手を繋いではしゃぐ姉にお願いする。
「ねー、おねーちゃん!私、アンディジョーン・アドベンチャーに乗りたい!」
「だーめー!マリエル観てから!それ以外はオマケでーす」
「えー! じゃ、先にアンディの予約券とりに行く!それからでもいいでしょ?」
「あ、それいいね、そうしよっか!全然考えてなかった!あはは~」
(完璧に連れてくとか言ってなかったっけ…? ふわふわした姉を持つと大変だ…)
年齢に似合わず、
入口すぐにある、パーク内のエリアを移動できるトランジットスチーマーシップの乗り場へ行く。これに搭乗すれば、アンディジョーン・アドベンチャーがあるラストリバースクエアエリアへ行けるのだ。
少し緊張しながら、姉と並んでチョコンと席に座り、ゆっくりと流れていく風景を眺める。
外国の港町の風景から、ゆっくりと姿を現す壮大な火山に圧倒される。それが遠くなっていくと、今度は海を
姉のお目当てはここ、マーメイドディーパーエリアである。その証拠に、目をキラキラとさせて、その風景を食い入るように眺めていた。
更に通り過ぎると、どんどんと密林の怪しい雰囲気へと変わる。ここが終点であり、私が一番好きなラストリバースクエアエリアだ。
この風景の流れをみていると、いつもは感じない、正体不明の感情が湧き上がってきた。
(なんだろう…?)
マーメイドコンサートの上演が終わる頃の時間帯の予約券を無事に取る事ができた私たちは、そのまま隣のエリアであるマーメイドディーパーへと歩いて行った。
その変化を眺めながら、私はまた、言い表せない感情に包まれていた。
(なんだろうこの感じ? ワクワクするような、ザワザワするような…)
不思議な感覚に包まれながら、早くマリエルに会いたくて急か急かと早歩きする姉に遅れまいと、必死に歩く。
少し息をあがらせながら、マーメイドコンサートが上演されるシアターへと到着した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます