生きる屍=?
黒夢
第1話 ???と始まり
「なんで君は自ら嫌われに行くの?こんなにも優しいのに」
初めてかもしれない。彼女と出会ってから世界が変わったかのような気がして、心が躍って..............冷たくなっていく彼女を抱いて俺は泣いた。
血の匂いさえ今は気にならず、冷たい彼女から溢れていく暖かい液体を止めようとしてもそれは止まらず。彼女は............俺が殺したのだ。
俺はやつの車に乗せられてずっと外の景色を眺めていた。そこには代わり映えのしない街並みがあり、対向車線から絶え間なく対向車がこの車を通り過ぎる度に小さな風がごぉごぉと鳴り、やつはお気に入りなのかは分からないも俺の好みじゃない今話題のバンドの曲が流れていた。
「♪♪~」
呑気に鼻歌をしながら運転しているのはやはり俺の性格上なのかもしれないが酷く嫌っていたのを覚えている。
滋賀県から東京までは早くて6時間、着いた頃には寝てもいい頃だが移動の合間に仮眠を取っていたお陰でとても寝れる状態ではなかった。
「着いたぞ。ここが俺の職場だ」
そこは大きな施設だった。俺はやつから「すこしそこで待っててくれ」と言われ、やつはそそくさとその施設に入っていった。一方の俺も念のためにポケットから銃を出し、弾が入ってるのを確認すると安心したのかおおきなあくびが出て、今まで使っていなかったスマホを眺めていた。
自身のYouTubeの動画でコメントを一つ一つ見て気づいたことがあった。
見てる人の中には俺に同情するようなコメントまである事実に、しかしそれは沢山の暴言で埋もれているから並大抵の者は見ないコメント俺はそいつらにだけ返事を返した。
「こんな自分に優しい言葉をかけてくれてありがとうございます」
何故か目には少しの涙が浮かんだ。
※
(急がないと) 俺は急いだ。早歩きになりながら考えることは...........クビ。
それはそうだ。俺は独りで班の誰にも伝えずにやつのところへ行き、そしてこのデータと引き換えにあいつを野に放つ契約をしたのだからクビは間違いない。
でも.........これだけは曲げない。俺はあいつに私情を入れてしまった以上、あいつが目の前で捕まるのを見て見ぬふりすることが出来ないのだ。
長距離を走って身体は疲れているはずなのに謎の力でもう少しもう少しだと身体に鞭を打つかの如く自分を勇気づけてまだ歩かせてくれる。
勢いよく班のメンバーがいるドアを開けて心の中でこうつぶやく。
さぁここからが勝負だ。俺は一歩踏み出し、目の前にいるこの班の最高責任者、上層部の一人の奴を含めたメンバーにこれから先ほどまでのことを話さないといけないと考えると荷が重いがこの事件は単なる事件で済ましてはいけないと考えると言葉は勝手に出ていた。
「来てそうそう悪いが、俺は単独でやつに会いに行った」
これから始まるのは始まりかそれとも終わりか日本の未来を左右する重要な話となる。俺は周りを見回すもみんなは以前ポカーンと口を開けているばかりで。
「..........覚悟はできてるのか?」
最高責任者は俺に問うた。その意味は言わずとも分かっていた。
俺は言葉にしないものの首を縦に振る。
「よろしい。話せ」
俺はすぐに机に例のUSBメモリーを置き、こう言った。
「奴を捕まえることは出来ない。その代わり奪われたデータは取り戻した」
辺りは重たい空気に包まれたまま、俺は話を続ける。
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