69. 華都、王城にて
あたしとヘファイストスは屋敷の守りを整えると、一路華都へと向かった。
王城に行けば最新情報があると思うんだ。
なくても女王陛下から指示をいただく事ができるし。
エリスも心配だしね。
華都方面に向かう道は特に普段と変わりない。
戦争の事がまだ伝わりきっていないのかな?
それとも、華都まで侵略される事はないと考えている?
どちらにしてもここまで攻め込ませるわけにはいかないね。
がんばらなくちゃ。
華都の王城にある王家専用の駐機場に行くと、あたしも止められて一応内部を調べられた。
調べた兵士もあたし以外をヘファイストスが乗せる事はないと理解してはいるんだけど、状況が状況だけに念のため調べなくちゃいけないからね。
お仕事ご苦労様。
さて、あたしは女王様に面会を申し込まなくちゃ。
駐機場から王城へ入ると伝令の騎士が待ち構えていて会議室へと案内された。
そこには、女王陛下とエリスが先には言って待っていたよ。
他にも何人かがいるから会議中にあたしが乗りつけたのかな?
これって丁度よかったのか、邪魔したのかどっちなんだろう?
「ああ、アウラ。もう領地の守りは大丈夫なのかしら?」
女王陛下が一番にあたしへと声をかけてきた。
念のための確認ってやつだろうね。
安心させるためにもしっかり答えなきゃ。
「はい、大丈夫です。あとはフェデラーとクスイに任せてきました」
「そう。あのふたりならエンシェントフレームさえなんとかなれば持久戦が出来るでしょう。いま軍議中なの。丁度よかったからアウラも聞いていって」
「はい。失礼します」
あたしが途中参加した事で確認の意味合いも含め、軍議は最初から説明をし直す事になったみたいだ。
現時点での最新情報によると、リードアロー王国軍は各地方にある国境の砦を突破、3部隊に分かれて国境の街を襲撃中らしい。
ただ、情報伝達の時間差を考えると、既に国境の街は落ちている可能性が高く、占領した街で守りを固めているか次の進軍に備えて物資を強奪しているかのどちらかだろうという予想だった。
マナストリアの部隊配置は、一番規模が大きいとみられる部隊に対して王配殿下が、残りの2部隊を第一王子殿下と第二王子殿下で対応する予定であるとのこと。
対応する予定というのは、まだ国の常備軍しか集まっておらず、各地方の貴族軍が集結していないため進軍できていないそうだ。
目下の作戦目標は早期の部隊出発と占領地域の奪還になる。
さて、ここまでが一般的な軍議で説明された情報。
ここから先が、偵察兵を使って得た情報だ。
リードアロー王国軍は各地で物資を強奪するのにかなり苦戦しているらしい。
なぜなら、冒険者ギルドやルインハンターズギルドが敵に回っているためだ。
約4年前の騒動のとき、この2つのギルドはリードアロー王国から手を引いた。
その結果、リードアロー王国では冒険者ギルドもルインハンターズギルドもなくなっているわけだが、その影響が戦争でも出ているらしい。
基本的に戦争時、冒険者やルインハンターは自己防衛以外の防衛活動参加は任意かつ自己責任である。
それがリードアロー王国とは縁が切れている結果、各街と2つのギルドとの間で契約が結ばれた。
冒険者やルインハンターが街の資産や街の住人を護衛しているのだ。
リードアロー王国もこれでは物資の調達が思うように進まない。
それに物資を調達しようとするだけで戦力を失う可能性があるというジレンマに陥っているらしい。
そのため、リードアロー王国は各街から先への侵攻がなかなか出来ていないようだ。
「……以上が現状報告になります」
これですべての報告が終わったらしい。
現状を確認した女王陛下やエリス、各将兵たちは様々なアイディアを出し合い軍の動きをシミュレートしていく。
はっきり言って割り込む余地がない。
あたしはなにをすればいいんだろう?
「……軍の動きはこれを目安に行動ね。次、アウラにやってもらいたいことなんだけどいいかしら?」
「はい、なんでしょう」
ようやく私の番が回ってきた。
よかった、忘れられているんじゃなくて。
「アウラには敵の裏側に回り込んで補給路を破壊してほしいのよ」
「補給路を?」
「破壊方法は問わないわ。道を爆破してもいいし、物資を奪い去っても構わない。後続の部隊を蹴散らすのでもいい。とにかく、補給を断ってちょうだい」
「それってあたしひとりでやるんですか?」
「ほかに誰かいる?」
ほかに誰かが必要か。
あれ?
敵の補給路を破壊するって言うことは結構危険なミッションだよね。
そんなところにエリスを連れていくわけにはいかないし、マナストリアにあるヘファイストスが作った高速機動型エンシェントフレームは伝令向けで戦闘能力に欠ける。
戦闘能力が高いものも既存のエンシェントフレームを改修することで何機も用意しているけど機動力が足りない。
つまり。
「あたしとヘファイストスの戦闘力と機動力に付いてこられる機体って王家に渡したマナトレーシングフレーム以外の機体がないんですね」
「そうなのよ。私やエリクシールが出撃するわけにはいかないの。非常に危険な任務だけどお願いできる? 無理だと感じたら逃げ帰っていいわ」
「わかりました。出来る範囲で対応します」
「お願い。以上で軍議を終えるわ。ほかに意見のあるものは?」
意見のある人はほかにいなかった。
結構危険な役割を引き受けちゃったけど、国のためだもんね。
エリスを守るためにもしっかりやらなくちゃ。
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