63. 観光都市としてのレイキ

 観光都市の方も動き始めて1か月が経とうとしていた。

 もっとも、この1か月で出来たことなんて、ホテルの内装を整えることと人員の調達、それに伴う住居の建て増し、やって来るだろう冒険者たちに備えて冒険者ギルドの開設などだ。

 あたしが手を回してやった事と言えば、冒険者ギルドの開設依頼くらいであとは勝手にできあがって行っている。

 いや、家を建てるのはあたしがヘファイストスを使ってやっているんだけど、これもなにかと不便よね。

 ヘファイストスに相談したら、建築などの技術だけを引き継いだエンシェントフレームも開発できるらしい。

 そういうことはもっと早く言ってほしいかな。

 本当にヘファイストスって変なところで気が利かない。

 あと、商売の匂いを察してか商人たちも集まり始めた。

 まだ商う物はホテルで働く人向けの商品ばかりだけど、今後はそれも増えていくだろう。

 農業都市の方は至って順調だしね。

 いずれはそちらの作物だって売られるようになるはずだ。

 ちょっとレイキの発展が楽しみかも。

 そう思って街を視察していたある日、ホテルを買収した商会の会頭さんが来ていてあるお願いをされた。


「レイキのPRをしてほしい?」


「はい。何分、この街も新しくできたばかりで知名度がありません。ミラーシア湖のすぐ側に出来た観光都市といえば聞こえはいいですが、それだけでは何年経っても人は集まらないでしょう」


「それもそうね。それで、何をしてほしいの?」


「領主様にはエンシェントフレームを使い、各地方から観光客を集めてきてもらいたいのです」


 はあ!?

 ヘファイストスで観光客を集めてくる!?

 どうやって!?


「ああ、言葉足らずでしたな。エンシェントフレームが持ち運ぶことの出来る人員移動用コンテナを使い、この地に集めてきてもらいたいのです。そうすればこの街の良さもわかっていただけるでしょう」


「ビックリした。それで、それっていつ始めるの?」


「おそらく1か月後くらいからになるかと。各地に文を送り、承諾が得られたところから始めようと思います」


「1か月後。夏から秋に変わり始める頃よね。大丈夫?」


「おそらく大丈夫でしょう。ミラーシア湖はその季節によって美しさを変えると聞きます。季節の移り目もまた美しい物になるかと」


「だといいけど。それじゃあ、そっちはお任せするわ。準備が出来たら教えて」


「かしこまりました。なにかと話を聞いていただける領主様で助かります」


「ミラーシア湖観光は、あたしも本腰を入れて取り組んでいく一大産業だからね。最初でこけられちゃ困るのよ」


「なるほど。それでは我々も気合いを入れて準備にあたりましょう」


 各地から人を呼んでミラーシア湖をお披露目か。

 言うは易しだけど、ヘファイストスみたいな空を飛べる移動手段でもない限り無理な話だよね。

 あたしも都合よく使われているなぁ。

 気にしないけどさ。

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