59. 『レイキ』への初移住者
新たな街、あたしは『レイキ』と名付けたこの街にフェデラーの運転する魔導車は到着した。
門番などもまだまだ最小限の人数しか配備できておらず、それだってミラーシア湖の警備部隊からの借り物だ。
早いところ『単一の街』として活動できるようにしないとなぁ。
「アウラお嬢様。今回の移住希望者15名、全員下車いたしました」
「わかった。すぐにあいさつに行くわ」
あたしはヘファイストスの足元から魔導車の方まで移動する。
そこには若い男女15人が不安そうな顔立ちで待っていた。
「ようこそ皆さん。真新しい街、レイキへ。あたしがこの街を含めた一帯の領主、アウラよ」
「これは領主様、ごあいさつありがとうございます。しかし、これで街というのは……」
「まあね。いまは誰もいないのよ。あなたたちが最初の移住者ってわけ」
「はあ……」
「まあ、ここはいずれ稼働する観光都市部だから気にしないで。いまはあなた方にとって大切な部分、農業都市部に移動しましょう」
「わかりました。みんなも行くぞ」
ここまではきちんとあたしの言うことを聞いてついてきてくれている。
さて、農業都市部ではどんな反応を見せてくれるかな?
「お待たせ。ここが農業都市部よ」
「ここが農業都市部?」
「畑はないんですか?」
「畑は第一街門の外にあるの。日照不足にならないようにってこの街を設計した人からの提案でね」
「なるほど。じゃあ、ここにある家が私たちの家になるんですか?」
「ええ。好きな家を使っていいわよ。とりあえず30戸ほど建てたわ。中身は暮らせる人数によって部屋数が変わる程度でしかないから。あまり広い家をひとりで使おうとすると掃除が大変よ?」
あたしの言葉にそりゃそうだと笑いが起きる。
どうやらみんなリラックスしてきたらしい。
とりあえず、お昼までは家で荷ほどきの時間としたので各自家を見て回り、好みの家を見つけて住み始めた。
好みの家と言ってもみんな一カ所に固まっているんだけどね。
使った家は7戸。
兄弟などで来ている人が結構いたみたい。
兄弟などでも家を分けていいと言ったんだけど、慣れるまでは一緒の家の方がいいんだってさ。
食事とかの面でもひとりよりふたりの方が手間が少なくて済むからって。
確かにそれはそうかもね。
「みんな、家は大丈夫?」
お昼時になり、移住者みんなに一度集まってもらった。
昼食を配ることと今後の話をするためだ。
「立派な家をありがとうございます、アウラ様」
「俺たち農民にはもったいない立派な家です」
「その分は働いてもらうわよ。無理をしない程度だけどね」
ひとまず昼食を済ませてもらってから、全員で第一街門の外へと移動、畑のあるエリアへと足を運んだ。
畑のエリアはまだ耕していないが、日照のいいエリアを選んだつもりだ。
水はけや用水路だって水龍とヘファイストスの指導の下でしっかり整備したつもり。
さあ、どうよ!
「おお、ここが俺たちの畑になるんか……」
「いまはなにもないけれど、広いな」
「水だって用水路が流れているから水まきが楽そう」
「だなぁ。よく考えられているだ」
ふっふーん!
あたしの勝ちね!
いや、どこが勝ったのかは知らないけど。
ともかく、畑も第一印象はいいみたい。
次は農作業用の道具をお披露目しちゃうよ!
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