53. ミラーシア湖観光の実態について
シャムネ伯爵夫妻がやって来た翌日、早速あたしは王城を訪ねてみた。
女王陛下は会議ですぐに会えないみたいだけど、エリスには会えたからね。
ミラーシア湖がどのように利用されてきたのか聞いてみよう。
「ミラーシア湖をどのように観光利用していたか、ですか……」
「そう。エリスはなにか知ってる?」
「いえ、私はなにも。お力になれず申し訳ありません」
「そっか。気にしないで」
エリスはダメか。
よく考えればエリスは利用する側であって管理する側じゃないものね。
知らなくて当然か。
となると、実態を知っている人がどこかにいるはずなんだけど。
「ねえ、エリス。ミラーシア湖の管理を行っていた部署みたいなところはないの?」
「え? ありますが、そこがなにか?」
「そこならミラーシア湖の観光事業について詳しいかもって」
「なるほど。それでは、そちらに連絡を取り、ご案内いたしましょう」
エリスに頼んで担当部署と連絡を取ってもらい、そちらに行くこととなった。
担当していた部署ではいまも忙しそうに文官たちが働いている。
ミラーシア湖の管理はあたしの管理になったはずなんだけどなぁ。
「おお、ようこそおいでくださいました。エリクシール殿下、アウラ名誉伯爵」
「今日はよろしくお願いいたしますね」
「ええ、こちらこそ。いまはアウラ名誉伯爵にお渡しするべき資料の編纂に追われている途中でゴタゴタしておりますが、どうぞなんなりとご質問ください」
「あたしに渡す資料?」
そんな物があるなんて初めて聞いた。
難しいものじゃなければいいんだけど。
「なに、たいした物でもございません。アウラ名誉伯爵にお渡しするのは毎年の観光者数や王族の利用状況、不審者の立ち入り摘発件数などです。それ以外の資料もありますが、主なところはそういった内容となるでしょう」
観光者数に王族の利用状況、不審者の摘発件数ね。
確かにあると便利かも。
特に観光者巣は助かる。
「あの、その観光者数について聞きたいんですけど大丈夫ですか?」
「ええ、もちろん。なにを伺いたいのでしょう?」
「ミラーシア湖にはどの程度の観光客が毎年訪れ、利用していたのでしょうか? また、その中に貴族はどの程度含まれますか?」
「ふむ。まず、毎年の観光者数ですが、北側が1000人弱、南側が2000人前後ですね。これは、北側ルートの方が最寄りの街からの距離が遠いためだと考えられております。また、貴族の利用者はほとんどおりません」
え、ほとんどいない?
どういうこと?
「ミラーシア湖は王族の保養地でございます。そこに『観光』目的で何度も足を運ぶなど王家に対する非礼と考えている貴族がほとんど。一度は訪れた事があっても、それっきりなのが普通です」
「えっ、そうなの? シャムネ伯爵夫人の親戚筋に当たる侯爵家は毎年避暑に来ていると言っていたけれど」
「なんと!? おそらく、正規のルートからわずかばかり離れた場所で過ごしていたのでしょう。多少のことでしたら、管理者様も気に留めませんからね」
なるほど、水龍も気を遣ってくれていたんだ。
でも、それをいいことに好き勝手している悪人もいたみたいだけど。
「まったく不敬極まりない。しかし、そのようなことをなぜお伺いに来たのでしょう?」
「シャムネ伯爵夫人がミラーシア湖の観光を許可しろと言ってきたのよ。それでどうしたものかと思って王城に来たわけ」
「そういうことでしたか。それでしたら無視する方が得策かと。あのような無作法者に付き合う必要などありませんよ」
やっぱりこっちでも同じ意見か。
でも、それだけだとあたしも困るんだよね。
「そこをなんとかならない? あたしとしては都市を造ってみることも視野に入れているのよ」
「都市、ですか?」
「そう。観光と農業の都市」
「なるほど。ですが、新たな都市を造るというのも難しいことですよ?」
「そこはなんとかする。いまはできるかどうかの構想を練ってみたいのよ」
「わかりました。その話、我々の部署も乗ります。ただ、ミラーシア湖周辺に都市を造るとなれば女王陛下や管理者様の許可も必要でしょう。まずはそちらをいただいてからですね」
「わかった。そうするよ」
都市造りは女王陛下と水龍の許可が必要と。
どちらかと言えば女王陛下の許可が難しそうだなぁ。
でも、話をしてみないことにはどうにもならないよね。
頑張ってみよう。
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