第3章 王都リードアローでの暮らし
9. 王都リードアロー到着
ゴーレム騒動も終わって王都に向かい2日ほど、遂に王都が見えてきた。
遠く離れた崖の上から見ているだけだけど、その大きさはよく伝わってくる。
ヘファイストスにお願いして拡大してもらってもすごく巨大な街だからね。
正直、ルインハンターにとって遺跡のない街はあまり近寄ることはない。
商売の種がないからね。
でも、今回はゴーレムを売りさばく必要もあるし、観光目的でも寄り道していかなくちゃ。
お金、たくさんもらったし。
この大陸の共通貨でもらっているから別の国でも通用するけれど、この国でもある程度使わなくちゃね。
なにに使うかは決めてないんだけどさ。
『アウラ、そろそろ出発するか?』
「そうだね。眺めてないで行こうか」
『了解した。飛行モードであの街まで乗りつける』
「あの街って……一応王都だよ?」
『私の時代からすれば『街』クラスだな。もっと大きな都市はいくらでもあった』
へえ、ヘファイストスの生まれた時代ってそんなに栄えていたんだ。
ともかく、崖から空を飛んでリードアロー王国の王都、リードアローにたどり着いた。
そこで入街審査を済ませてから街の中へと入ったけれど、ヘファイストスと同じくらいの背丈があるエンシェントフレームを見かけるよ。
いままでの街じゃ10メートル級しかいなかったし、王都ってすごいのかも。
『アウラ。目的地はどこだ?』
「えっと、ひとまずルインハンターズギルドに向かおう。場所は……」
『ルインハンターズギルドとは前に私の所有者登録をした場所か?』
「うん、そう。この街に国のギルド全部を束ねる本部があるはずなんだけど……」
『……検索終了。同じエンブレムを掲げた建物が8棟ヒットした。その中でも一番大きな建物がその本部ではないのか?』
「そうかも。そこに向かってもらえる?」
『承知した』
ヘファイストスが見つけたという場所に向かって移動してもらう。
エンシェントフレーム用の道路は幅広く作られており障害物もまずないのだが、その端でヘファイストスを見上げる人々の反応は大分異なる。
珍しい赤とオレンジの装甲にキラキラ目を輝かせる子供もいれば、見かけないエンシェントフレームに一瞬だけ興味を示し、すぐに視線を元に戻す大人たち。
やっぱりヘファイストス級の大きさでも日常の風景なんだなって実感させられるよ。
街の人々の反応を伺いながら移動すること十数分、ルインハンターズギルドのエンブレムを掲げる立派な建物の前にたどり着いた。
ここがギルド本部かな?
『一番大きなルインハンターズギルドと思われる建物はここだ。そういえば、街中で人々が私を見る目は大分違ったな。これも王都ということか』
「多分そう。ヘファイストスと同じくらいの大きさをしたエンシェントフレームも歩いていたし、珍しいだけで大きさには驚かないんだよ」
『そういうものか。ところで、私はどこで待っていればいい?』
「あ、それも調べなくちゃ。ちょっと聞いてくる」
一度ヘファイストスから降りてギルドの職員にエンシェントフレームをどこに置けばいいか聞いたところ、ギルドの裏手が駐機場になっているらしい。
駐機料はかかるらしいけど街中に長時間エンシェントフレームを止めておくはできないらしいから、そこに止めるしかないね。
あたしはもう一度ヘファイストスに乗り込むと、裏手にあった駐機場でヘファイストスを駐機姿勢にして止めた。
そこで駐機料を支払いあらためてギルド内部へと入って行く。
ギルド内部はルインハンターズギルドらしからぬ清潔な空間で、内装も少し豪華だった。
さすが王都のルインハンターズギルド、こんなところにもお金を使っているのか。
ちょっと見直しちゃった。
そこの受付でヘファイストスの所持者である証のエンブレムを見せてからゴーレムたちの売却先を紹介してもらおうとしたところ、難しい顔をされた。
なんでも最近王都にも大量の聖銀鉱が持ち込まれたらしく、在庫がかなりあるらしい。
この状況下で大量の聖銀鉱を持ち込んでも足元を見られて安く買い叩かれるだけだというのだ。
まあ、気持ちはわかるし間違ってもいないけど、売り先をどうしよう……。
私が悩んでいると受付係は相談相手を連れてくると言って奥へと行き、数分後に迫力のある女性を連れて戻ってきた。
この人が相談相手かな?
「あんたかい? セイクリッドシルバーゴーレムを倒して聖銀鉱を大量に売りたいっていうのは」
「はい。アウラっていいます」
「私はリンガ。ここのギルドマスター、つまりはリードアロー王国の総ギルドマスターさ」
ギルドマスター!?
そんな人がでてこなくてもいいのに。
「とりあえず、現物の状態を確認しようか。聖銀鉱を出せるかい?」
「あ、まだゴーレムのままです。これから解体しないと」
「解体って……エンシェントフレームが相手をするようなゴーレムの解体なんて人の手じゃ無理だよ?」
「あたし、解体ができる魔法も使えるんです。それを使います」
「ほう。そいつは面白そうだ。早速見せてもらおう」
「はい。あ、でも場所が……」
「駐機場を使えばいい。場所はとってあるけれど、どうせそこまで使っていない場所だからね」
「わかりました。そちらに移動しましょう」
あたしはリンガさんを連れて駐機場まで戻る。
そして、そこでヘファイストスに頼みセイクリッドシルバーゴーレムを1台出してもらった。
「こいつがあんたの倒してきたセイクリッドシルバーゴーレムか。目測13メートル級。苦労した……様子はないね。胸にあるコアを一撃で撃ち抜いたあとしかない。マナトレーシングフレームとは聞いていたが、そこまで性能差があるか」
「戦った時はあたしも驚きました。解体を始めても大丈夫ですか?」
「ああ、構わないよ。ちなみに、あるのはセイクリッドシルバーゴーレムだけかい?」
「フェアリニウムゴーレムもありますけど、この国であまり需要はないですよね?」
「妖精銀を扱える鍛冶師がまずいないねえ」
やっぱり。
妖精銀って特殊な加工が必要だって聞いているし、普通の鍛冶屋じゃ使えないのか。
ともかく、まずはこのゴーレムの解体だね。
「それじゃ始めます。えいや……っと!?」
解体を使った瞬間、あたしの足元がぐらつき尻餅をついてしまった。
どうやら想像以上に魔力を持っていかれたみたい。
これからも解体するときは気を付けないと。
「大丈夫そうだね。それにしても解体の魔法か。きっちり分かれてるね」
「あ、本当ですね」
太陽の光を浴びてキラキラと輝いているのは聖銀鉱、黒く輝いているのは魔銀鉱、残りは白金鉱かな?
魔銀鉱は魔力を通しやすい魔法鉱石、白金鉱はひたすらに硬い鉱石だね。
あと、あれは……。
「ずいぶんとでかい命晶核が残ったもんだ」
「本当ですね」
リンガさんが言った『命晶核』というのはゴーレムのコアを構成する鉱石。
鍛冶では使えないけれど錬金術で武具に混ぜれば自己再生する装備になるらしい。
あたしの装備も自己再生するらしいから、命晶核が使われていたりするのかもね。
「しかしどうするよ、この量。聖銀鉱だけでもとんでもない量の山だぞ? これ以外に魔銀鉱と白金鉱もある。売るのは苦労するし、足元を見られるぞ?」
「ですよね……」
さて、どうしたものか。
これだけの鉱石を使うなんて鍛冶師でも数年かかるだろうし、ほかにも入荷しているならあまり必要ないだろうし……困った。
『話を聞いているがその金属の売り先に困っているのか?』
「あ、うん。そうなんだよ、ヘファイストス」
『ならばアウラがその鉱石で装備を作ればいい。鍛冶魔法も渡してあるだろう?』
あ、そういえばそんなものもあった。
どれだけの武器が作れるかわからないけれど、作ってみるしかないか。
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