第17話 〝フラップ・フリーリー〟

キラリ「へぇ、そうなんだ。それで、その弟は今どうしてるの?」


翼「それがさぁ…あいつは去年同級生の女の子を妊娠させちまって、ウチの親と大喧嘩して高校中退して家を出て行っちまったんだよ…それから俺とも連絡取ろうとしなくて今は行方不明さ…」


キラリ「そうなんだ。私もここには凄く思い出がいっぱい…初恋の人と出会ったのもここなんだ…


ここで告白されて…今度あったら付き合おうって言われたんだけど…それっきり…


私…ここの神様にね、いつも色んな報告しに来るの。嫌なことがあったり、嬉しいことがあったり…お願いしたいことがあったりしたとき…


ま、ほとんどお願いは聞いてもらえなかったけど…母ちゃんは神様はみんなのお願いを順番に聞いて回ってるから、いつかキラリの順番が来たとき必ずキラリの願い事は叶うよって…言ってくれた。だから私の順番が来たときの為にいつも同じお願いをするようにしたんだ。

だって色んなお願いしてたら、神様どれを優先して聞いたら良いのかわからなくなるじゃん?」


翼「その願い事って…何だよ?」


キラリ「……………優しくて素敵な王子様が私を迎えに来て下さいって…」


翼「そっか…叶うと良いな…その願い…」


キラリの気分はすっかり晴れて、次の日からも学校から帰るとすぐに机に向かい毎日小学校の勉強に励んでいた。そしてこの週末には小3の課程を全て修了した。


翼「キラリ!ようやく小3終わったな!」


キラリ「うん!ねぇ翼…前に最初のお願い聞いてもらえなかったから二つ聞いてもらえるんだよね?」


翼「………キラリ、その最初のお願いは…この小3の課程が全部修了した今がちょうどそのタイミングだってこの前話したんだけど…お前には理解出来て無かったってことだけど…わかってくれるかな?」


キラリ「えぇ!?それじゃ約束違うじゃん!」


翼「……………やっぱりお前にはちょっと難しい話しだったかな…」


キラリ「でもいっか…この前プチデートしてくれたからそれで許して上げる!」


翼「……………あ……ありがとう……た……助かる……」


キラリ「じゃあ最初のお願いってことで…」


翼は最初から高い要求をせがまれたらどうしようかと心配になっていた。


キラリ「よく頑張ったね!って…頭を撫で撫でして欲しい…」


お前…そのシーンは…正に…


キラリはちょっと恥ずかしそうに上目遣いにそう言った。

この時翼の心境にもある変化が生まれつつあった。

翼はこの汚れを知らないピュアなキラリの姿に、他の女にはない新鮮さを感じていた。


翼は椅子に座っているキラリの頭に軽く手を乗せて


翼「キラリ、よく頑張ったね!」


そう言って頭を撫でた。


キラリ「うん!」


キラリは無邪気に喜び、その翼の手の感触に幸せを噛みしめていた。


しかし、キラリのこの幸せな時間も長くは続かなかった。

翼はこの週末もまた用事があって出掛けると言い出したのだ。


キラリにとっては青天の霹靂…

キラリのやる気スイッチに水を差すことになる。


キラリはあまりの切なさに、レディースメンバーを呼び出して夜の街へと繰り出した。


~土曜日の夜………繁華街~



レディースメンバーA「総長どうしたんすか?」


レディースメンバーB「なんか総長がそんな浮かない顔すんの見たら笑いそうになっちゃう!」


キラリ「何でだよ!」


レディースメンバーB「だって、総長いつも能天気で何も考えて無さそうじゃん!」


レディースメンバーC「あぁ!もしかして…総長、例のイケメン彼氏にフラれちゃったぁ?」


レディースメンバーD「え!?マジで総長イケメン彼氏と付き合ってんの?」


レディースメンバーE「総長!ちょっと写真とかないんすか?」


レディースメンバーD「実はイケメン俳優を数発殴ったぐらいの顔だったりして?」


メンバー達は勝手なことを言って大爆笑している。


キラリ「お前らよ…ちょっとは私が総長ってこと自覚してくれるかな?」


レディースメンバーA「だって、総長には威厳とか全然ないし…」


レディースメンバーC「昨今、猫も杓子もイケメンイケメン言われる時代だから、本当にイケメンなのかどうかも怪しいけどねぇ…」


レディースメンバーD「そうそう!普通のオッサンじゃんって人までイケメンとか言うの見ると、お前の脳ミソ解剖してやろうか?とか思っちゃうもん!」


キラリは好き放題言うメンバーに一喝した。


キラリ「お前らうるせぇなぁ!!!ほんとは彼氏なんて居ねぇよ!!!私なんかにイケメン彼氏なんて出来るワケねぇだろうが!」


レディースメンバーA「うわっ…総長カチギレ!」


レディースメンバーE「ですよねぇ~、何なら総長…私がイケメン紹介しましょうか?」


レディースメンバーD「だからそれ、イケメンという名のオッサンじゃねぇのかって」


レディースメンバーC「イケメンって言ったら、やっぱあのインディーズバンドのヴォーカルの人!あの人ぐらいなら誰も文句は言えないってぐらいレベル高いけどねぇ~」


レディースメンバーB「あっ…それ!何だっけ?あのバンド名…」


レディースメンバーA「フラップ.フリーリー!!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る