第14話 夜のブランコ

キラリのレディースメンバー達は、各々のタイミングでこの一斉送信されたLINEを見た。

そして各メンバーからグループLINEにキラリ宛てに返信がある。


〝明日の夜はちょっと~…彼氏とライヴ見に行くんで無理ッスね…〟


〝総長言うの遅すぎッス!もう予定入れちゃったんでゴメンなさい〟


〝えぇ!?いきなり明日ッスか?あと一分早く言ってくれれば行けたんすけど…総長すいません…〟


〝明日!OKッス!行けたら行くんでヨロシク!〟


キラリのレディースチームはこんなゆるゆるメンバーの集まりであった。

キラリが自由奔放なのだから全員右にならえである。


キラリは心の中で


どいつもこいつも…


と舌打ちしていたが


〝そっかそっか…いいよわかった!せっかく明日の集会で、私の超イケメン彼氏お披露目しようと思ったんだけど…残念だ…〟


とキラリがLINEすると


〝総長!明日彼氏から用事あるって断られたんでOKッス!〟


〝総長!明日いきなり予定は未定になったんで集会行けます!〟


〝総長…やっぱ1分総長の方が早かったみたいなんで集会の方優先します!〟


〝総長!行けなくても行けるんでヨロシク!〟


おいおい…お前らもみんな現金なヤツだな…


そこでキラリが仕返しにグループLINEにこんな一斉を送ると


〝ゴメン…みんなに断られたから超イケメン彼氏も他の用事出来たってさ…〟


そのキラリのLINEには全員既読スルーであった。


お…お前ら…背中には気を付けろよ…


キラリは急に虚しくなり薫を探しに下へ降りた。


キラリ「母ちゃん?」


キラリはリビングを覗くが誰も居ない。

風呂場の方から何か音が聞こえたのでキラリは脱衣場の方へ歩いた。


キラリ「母ちゃん?」


脱衣場の戸の外から声をかけると、ガラガラと戸が開いて、バスタオルを腰に巻いただけの姿で父、清が顔を出した。


清「キラリどうした?」


キラリ「なんだ父ちゃんか」


清「まぁ、わりとな…」


このちぐはぐなやり取りに全く違和感を感じないのがこの親子なのである。


キラリ「母ちゃんは?」


清「んー…ちょっとコンビニ行ってくるとか言ってたけどな。まだ帰ってないか?」


キラリ「探しに行ってくる!」


キラリが薫を探しに玄関を開けた瞬間、目の前に薫が手に袋を提げて立っていた。


薫「あら、キラリ…どうしたの?」


キラリ「母ちゃん…」


薫は何も聞かずにキラリの手を取って歩き出した。

そして近くの公園に連れていき二人でブランコに乗った。


キーコ…キーコ…


二人は静かにブランコを揺らして


薫「で?翼と何があった?」


キラリ「……………」


薫「キラリ?明日の夜一緒にドライブでもしよっか?」


キラリ「え?」


薫「寂しいんでしょ?明日翼が居ないって言うから…」


キラリ「母ちゃん…エスパーなの?」


薫「んなワケ無いでしょ…翼が明日の夜はちょっと出かける用事があるって言ってきたから。きっとこういう展開が来るだろうなって予想してた。


ほら、あんたの大好きなジュース!」


キラリはジュースを受け取って握りしめていた。


キラリ「母ちゃんって凄いね…いつもいつも私の先を見越して行動してくれる…さすが母親って感じがする。母ちゃんありがとう…」


キラリは薫の優しさに救われた思いだった。


薫「キラリ?翼には翼の人生があるよ…翼の友達がいたり、付き合いがあったり、まぁ、わからないけど…女の子の友達だって居るかも知れない…


でも、そんなのイチイチ気にして束縛しようとすれば、いつか翼は息苦しくなってキラリの前から居なくなってしまうかも知れない…


前にも言ったよね?追うより追われるような女になりなさいって。


キラリはもっと自分を磨いて翼にヤキモチ焼かせるぐらいにならなきゃ!」


キラリ「うん!毎日垢擦りでゴシゴシ身体磨いてピッカピカに光って、キラリがキラキラに見えるって言わしてやる!」


薫「あんたのギャグセンスは…やっぱパパ譲りだね…」


薫はキラリが冗談を言えるほど元気を取り戻したことに安堵(あんど)した。



~翌日~



翼は午前中は自分の部屋で寝倒して、昼から行動を始めた。


キラリは机に向かって与えられた小学校低学年の課題に取り組んでいたのだが、翼がバタバタと動き回るので落ち着いて勉強出来ずにいた。


翼…あんなに忙しそうに支度して誰と何処に行くんだろう…


キラリは部屋のドアを開け放していたので、翼の忙(せわ)しない姿が視界に入る。


翼…凄くカッコ良くキメてる…あんな気合い入った翼なんて見たことない…どうせ私と居るときなんかどうだっていいんだろうな…


もしかしたら…本当に他の女と遊びに行っちゃうのかな…



キラリは勝手な妄想で一人切なくなっていった。



翼はキラリの部屋の前で一瞬立ち止まり、軽く手を振ってそのまま階段を降りて行ってしまった。



翼「キラリの母さん、それじゃちょっと行って来るんで、今晩は遅いから飯いらないっす」


薫「了解。じゃ頑張って来て!」


翼「ありがとう!」


翼はそう言って玄関のドアを閉めて出ていく。



母ちゃん…翼が何処に行くのか知ってるの?

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