夢と現実
御愛
どうしようもなくても何とかなる夢と、どうしようもなくシャバい現実
無我夢中で走った夢の話。
夢の中だから、本当に「夢中」ではあるんだけど、これはそんな言葉遊びじゃなくて、本当に本当の話。
暇なら聞いてくれないかな。
ありきたりな夢の世界。登場人物は私とそいつだけで、あとは何処かで見知った風景が当たり前の様に広がっていた。
私はその時、何か恐ろしいものに追いかけられていて、必死になってそいつから逃げていたんだ。
ちょうど長い長い坂を登ろうとしたところ、急に速度が落ちた。
どれだけ足腰に力を入れて腕を大きく振るって走ろうとしても、まるで亀の歩みのようで、ちっとも前に進めなかったんだ。
そのうちあの恐ろしい奴が私に追いついてきてしまう。しかし体はいう事をきいてくれない。私は募る焦燥感と恐怖に包まれた。
さて、私はこの後どうしたと思う?
……んん、そいつをぶっ飛ばしたなんて、夢の中の私は随分と豪気なんだな。大ハズレだ。
勿体ぶる必要もないから先に言うが、正解はだな、『夢から覚めようとした』んだ。
……何?いや私は最初に説明しただろう。これは夢の中の話だと。別にズルくなんてないさ。
……まぁ、続きを聞いてけよ。
私は、夢だという自覚がその時あったんだ。だから、目を閉じて、必死にどうか目を覚ましますように、と念じた。
経験上、こうすると夢から覚める事を私は知っていたんだ。
夢の中の意識はさ、ある程度現実の意識と繋がってんだよな。
だから暫く念じているうちに、こうスゥッと夢の中から現実へと意識が乖離して、布団の中で目が覚めた。
その時私は汗をびっしょりかいていて、すぐさま着替えを持って、浴室へと駆けた。
……まぁ、こんなオチだよ。
……え?なんでこんな話をしたのかだって?それは君が一番分かっているんじゃないかな。
これはもしもの話だけどね。
もし現実で何か、非常に困難な、恐ろしい事態に直面したとしよう。
だがな、ここは現実だ。夢とは違う。
「目を閉じて念じるだけで助かる」
とは、思わない事だね。
……さぁ、そろそろ前を向く時間だ。
目をかっぴらいて、恐れず進めよ?
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