第9話 屈折率ゼロ

 手と手を取り合うこともできない傷ついた二人に一体何ができるのか、だいいちこの二人は出会うことも惹かれ合うこともできるのでしょうか、自らが求めるべき人に出会うことができなかったからこそこの人々は自分ひとりでは癒やすことができなくなるほど傷つけられてしまったのだし、身動きが取れなくなるほど傷つけられた人は巡り合うべき人にも邂逅する機会も根絶やしにされてしまうのです、仮に万一見つめ合うべき二人が出会えたとして、まっさらに出会うことはまずできず、まず間違いなく傷つける人が最もそばにいて、傷つけられている最中にしか出会えないのです、そしてその二人には出会うべき人に出会えたと知覚する力も奪われているのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る