第7話 常に侵入するもの

 いついかなる時も虚しくて、どんな時も目の前の全てに力を注ぐことができない私、いつも胸に穴が空いていて風が通って虚しく寒く、脳だけが熱く荒れて、かぎざぎに傷つけるザーザーいうノイズに、痛め続けられている私の頭とみぞおちと心と身体のすべて、誰にも見えないし、私の苦しみは透明のようで、助けを求め、差し伸べられても、それは気の遠くなるほどかすかで、泣いてしまいそうなほど、いえ、泣くことさえできないから、苦しいことさえ感じられないことが苦しいのです、誰かにわかってもらいたいのです。苦しみを直視できない。私が苦しんでいることを、視界の端にちらと映り込んでも、あまりにおぞましく、とても見ることができないのです。確実にそこに存在している。周辺視野からかすかに外しただけ。私の背後、側面に、確実にそこに存在している。いついかなる時も、私は、犯され続けている、侵蝕されている。私の頭とみぞおちには熱い風穴が空いていて、常に冷水を浴びているように冷たいのは、いつもあの人に犯され侵蝕され入り込まれ、脳の奥まで、体の奥まで、殺され続けているからなのです。私が何もできず何も感じられず、誰にもふれあえないのは、だれといても、空虚で、隔絶されているのは、私がいついかなる時もあの人に犯され続け同化させられているからなのです。

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