①悪魔とのし上がるスターダム ~芸能界へ復讐を誓う少女が仕掛ける72個の罠~

九十九髪茄子

プロット

●物語概要(ログライン)

 芸能界に復讐を誓う女の子が、悪魔と契約し、その魔術と権謀術数の限りを尽くしてスターダムをのし上がる物語。


●参考作品

『コードギアス』『推しの子』『パリピ孔明』


●世界観

現実世界とほぼ同様の現代社会。

・芸能界

 特にアイドル産業が絶頂期にあり、トップアイドルはカリスマ的人気を誇る。そんな存在を生み出す事が芸能事務所にとっての「成功」である。裏ではトップアイドルに絡む欲望を持つものが様々な陰謀を巡らせている。

・悪魔の存在

 殆どの人間には知られていないが「悪魔」と呼ばれる超常的存在がいる。狡智に長け、変化や瞬間移動、記憶操作などの魔術を使う。人間社会に溶け込み、強い欲望を持つ者に近づき、契約する。


●主要キャラクター

雲梯うなてつぐみ

・主人公

・性別:女性

・年齢:17歳

・人物/経歴:

 売れないアイドル。中学時代に作曲を担当していた幼馴染、天堂たけるとともに演奏動画を配信していたところ、芸能事務所にスカウトされてデビュー。が、つぐみのルックスしか評価しない事務所の意向でアイドル路線に変更させられ、たけるの存在と彼が作った楽曲の数々はとして闇へ葬られてしまった(後にたけるは病死) この一件から、事務所に対して反抗的になったため飼い殺しにされている。

 たけるの曲でスターダムをのし上がり、絶頂期に命を断つことで、たけるを評価しなかった者たちに喪失感を味わわせようとしている。特技はピアノ演奏。

・ビジュアル:

 切れ長の目と、通った鼻すじの美形。真っ黒な瞳とストレートヘアを持つ。メイクの仕方ひとつつでクールビューティーにも爽やか美少女にもなれる顔。

 口が悪いため人前では黙っていることが多いが、それが「クール」「孤高」と評価されることもある。体型は痩せ型でセクシー路線で売っていくのは難しい(そのことを指摘されると露骨に不機嫌になる)

・性格:

 その外形や態度からクールな性格に思われることが多いが激情家。特に挑発に乗りやすく売られた喧嘩はかならず買う。

 情にもろい一面もあり、特に自分のように大切な人との別れを経験した相手には、おせっかいを焼きたがる。

・セリフイメージ:

「日本中が私のファンになる。私達の曲に夢中になる。そこで死ぬのが私の復讐」

「安心しなよ。今更そんなダサい真似はしないから」

「クソ悪魔。しばらく話しかけないでくれる?」


◆悪魔アムドゥスキアス(安東スキア)

・サブ主人公

・性別: 男性(外見のみ)

・年齢: 30代前半(外見のみ)

・人物/経歴:

 「真実の美を識る者」を自称する、音楽を司る悪魔。あらゆる快楽を味わい尽くした上で、その中で最高のものは芸術であるとうそぶく。

 つぐみがピアノで演奏した曲(たけるの作曲)を気に入り彼女と契約。安東スキアと名乗ってプロデュースを始める。

 契約の内容は「つぐみをスターにする代わりに、人生最高の瞬間に彼女の命を奪う」というもの。

・ビジュアル:

 30代前半の男性の姿をとる。かっちりと着こなしたスーツと黒縁メガネでビジネスマンの風格を漂わせているが、舌ピアスや髪で隠れた場所にタトゥーを入れるなど、悪魔の感性に沿ったお洒落も忘れない。

 悪魔の本性を表すとき、目を合わせた者を恐怖ですくませる冷たい視線を放つ。

・性格:

 芸術と同じくらい、陥れられた人間の表情を見るのが好きという最悪の性格。その気になれば、魔術と財力のみで簡単につぐみをスターに仕立てることが可能だが、より多くの人間を絶望させるために回りくどい陰謀を駆使している。

 女好きだが、性欲ではなく食欲の範疇に入るという。特に処女の女性芸術家の魂が最大の好物であり、つぐみのプロデュースは「最高の食材を調理する」という感覚で行っている

・セリフイメージ:

「おお、なんと血湧き肉躍る展開ではないか!」

「もしやお前は……バカなのか? 私はバカと契約してしまったのか!?」

「真の芸術が持つ官能を知っていれば、女の肉体に溺れるようなこともなかったのに。哀れなことよ」


初虹ういにじ風乃かざの

・ヒロイン(主人公の相手役。not恋愛対象)

・性別: 女性

・年齢: 18

・人物/経歴:

 人気アイドルグループTELL-ARIUMテラリウムのセンター。トップアイドルと誰もが認める存在。恵まれたルックスと性格、歌唱力や演技力も高く、さらには作詞作曲、衣装やCDジャケットのデザインなども自分で行う、アーティストとして完璧なスキルの持ち主。

 TELL-ARIUMのプロデューサーでもある母から、トップアイドルになるべく英才教育を受けてきた。しかし、そのことが原因で現在は母娘の間に軋轢が生じている。特に両親の離婚と、それによる弟との離別は、彼女の心に影を落としている。

 つぐみの機転によって弟と再会し、つぐみに友情と信頼を寄せるようになる。

・ビジュアル:

 ゆるふわ系。少し垂れ気味の大きな目と、柔らかな髪質のボブヘアが特徴。

 人と話すときは朗らかな笑顔を絶やさないが、レコーディングや台本の読み込みなど、仕事に集中しているときは、近寄りがたいほどに真剣な面持ちになる。

 仕事場へは自分お印象に沿ったコーデでバッチリ決めて来るが、プライベートではあまり身だしなみに気をつけることはい。そのことを母にたしなめられている。

・性格:

 聖女。明るく朗らかな性格で、周りへの気配りも忘れない。ADや無名の共演者も態度を変えず、真摯に接することから、現場の信頼も篤い。大御所芸能人やスタッフもそういう面を可愛がっており、彼女がトップアイドルになれた一因となる。

・セリフイメージ:

「あなたの動画見たよ!羨ましいなって思っちゃった」

「結局、私はママのロボットでしかないから……」

「こんなんでも私、好きなんだよなあ。作曲もお芝居も……アイドルって仕事も」


夕立ゆうだち愛夏まなつ

・悪役(ヒロインとの間に立ちはだかるライバル)

・性別: 女性

・年齢: 20

・人物/経歴:

 TELL-ARIUMで風乃に継ぐ人気を誇るアイドル。元気で爽やかなイメージで売っていて、特にティーン層の男女に人気がある。が、実は真逆の性格の持ち主で、数々のライバルを色々な手段で蹴落としてきた。

 TELL-ARIUMが風乃を売り出すための装置にすぎないことを見抜いていて、生き残るために風乃との百合営業を試みている。打算で彼女と行動をともにしているうちに本気で愛すようになってしまい、盲目的な想いを募らせている。

 つぐみを「二人の世界を破壊する侵略者」とみなし、敵意を剥き出しにする。

・ビジュアル:

 ショートカットの茶髪と、白く輝く歯がトレードマーク。明るくみずみずしい印象のルックスで、清涼飲料水や制汗剤、シャンプーなどのCMキャラクターの起用されることが多い。

・性格:

 嫉妬深く、陰険。敵とみなしたものは、とことんまで追い込む。一方で、風乃へ向ける想いは度を越したところがあり、ヤンデレの気質がある。

 風乃にはその本性を知られていないが、それが「風乃と一緒にいるときだけ本当の自分になれる」という独善的な思い込みに繋がり、2つの顔に整合性を持たせている。

・セリフイメージ:

「アオハル、してますか? キミに届けるアルファウォーター」※CM出演

「いいかげん風乃の眼中から消えてよ!」※本性

「風乃には私しかいないの。私といることが風乃の幸せなの!」※本性


村雨むらさめ大地だいち

・ヒロインの弟

・性別: 男性

・年齢: 16

・人物/経歴:

 風乃の弟。両親の離婚後、父親が引き取ったため苗字が異なる。

 母親に役者としての資質を見出され、幼い頃から劇団に入っていた。自分を、役に合わせた人格に塗り替えることができる、憑依型の俳優。類い稀な才能だが、母親の求めるもの(どんな状況でも己を押し通してしまうスター性)とは真逆の性質のものだったため、次第に母親の情熱は姉・風乃へと偏っていく。

 その結果、離婚時も親権は主張せず父に引き取られることとなる。これを大地自身は「母に捨てられた」と理解した。父親は離婚の一件から芸事の世界を憎んでいる。そのため、大地が役者の道を進むことを許しておらず、わだかまりが生じている。

 学校では演劇部に所属(父には秘密)部は、総文祭(高校演劇の全国大会)を目指した本格的な活動を行っており、その中心人物となっている。

・ビジュアル

 目力の強いイケメン。その目で睨まれると、悪魔の視線に慣れてきたつぐみでさえ一瞬怯むほど。が、笑うとその人懐こさで誰もが惹かれてしまう。スキア曰く「一種の魔性」

 服装や言動は学校とプライベートで使い分けている。学校では折目正しく制服を着こなし、爽やかな好青年として振る舞い、プライベートでは不良グループと遊ぶため彼らに合わせた格好をしている。それらも役者の修行として意図的に行なっている。

・性格

 時と場合によって使い分ける。本人曰く「どれも本当の自分で、仮面をかぶっている訳ではない」本性に最も近いのは姉と一緒にいる時。再会した際には、無愛想ながら自分よりも姉を気遣う態度をとり、他の相手にはでは絶対見せないほど瞳を輝かせ、「重度のシスコン」とつぐみを引かせる。

・セリフイメージ

「俺の前でTELL-ARIUMの話をするんじゃねえ!殺すぞ?」※不良モード

「ドンマイドンマイ!もう一度、今のシーンやってみよう!」※部活練習中

「姉ちゃん……ずっと、応援してた。あの日からずっと!」※姉と再会


◆その他の人物

・天堂たける:つぐみの幼馴染。故人。天才的作曲者で、中学生にして数々の名曲を生み出し、つぐみと一緒に演奏する動画を投稿していた。が、つぐみをアイドル売りしたい事務所にとって、男の幼馴染の存在は「ノイズ」でしかなく、曲ともども存在を無視されてしまう。失意の中、病死。


・風乃の母:TELL-ARIUMの総合プロデューサー。風乃をトップアイドルとすることに全てを捧げている。そのために家庭を崩壊させ、風乃本人との間にも溝が生じ始めている。


・リリア:淫魔サキュバス。スキアの三人の使い魔の一人。変化の術と人間には扱えぬ性技を駆使し、スキアの標的となった人物をハニートラップにかけていく。


・レヴル:半吸血鬼ダンピール。スキアの三人の使い魔の一人。悪魔らしからぬ穏やかな性格。狼や大蝙蝠に変化する。つぐみのマネージャーを務める。


・シャイロックⅢ世:強欲霊マモン。スキアの三人の使い魔の一人。シェイクスピア「ヴェニスの商人」のモデルになった金貸しの孫にあたる。スキアたちの活動資金の出どころ。


・原島:TV局の重役。つぐみに枕営業を迫るが、リリアのハニートラップに引っかかってスキアの傀儡となってしまう。


明日葉あしたばひとみ

TELL-ARIUMのメンバー。愛夏の取り巻きだったが彼女に見捨てられ、つぐみに協力する。


●物語構成

文庫ラノベ1巻で全3章構成。1巻あたり12万字の想定

・第1章(3.5万字)

つぐみがスキアと出会い、自分の復讐願望を吐露し、正式に契約を交わすまで。

・第2章(4万字)

つぐみとスキアが野望のため、風乃に近づき、その悩みを解決して信頼を得る。

・第3章(4万字)

妨害を仕掛ける愛夏を排除し、風乃とのステージを成功させる。

エピローグ(0.5万字)

次巻へのブリッジ。死んだはずのたけるが登場し、つぐみとの対決が示唆される。


●物語概要

※★マーク箇所を本文にて執筆しています

■第1章

・1-1 出会い:3000~4000字

 駅のコンコースに置かれたストリートピアノ。雲梯うなてつぐみ(以下 つぐみ)は、人気アニメの主題歌を披露する。その演奏技術に多くの通行人が足を止め、耳を傾ける。続いて彼女は誰も知らない曲を弾き始めると、観客たちは戸惑いやがて立ち去ってしまう。不満げな顔で立ち上がるつぐみ。

 一部始終を眺めていた悪魔アムドゥスキアス(以下 スキア)は彼女に近づく。不審に思ったつぐみは、スキアを無視して立ち去る。スキアは「久しぶりによい食事にありつけそうだ」とほくそ笑み、使い魔に彼女の後を追わせる。


・1-2 秘密クラブ:6000~7000字

 都内の何処かに存在する秘密クラブ。そこでは大物芸能関係者が会員となり、新人のアイドルやモデルが接客している。ここは新人がのし上がるための裏の登竜門であるとともに、枕営業や愛人契約の温床でもあった。

 事務所に違約金をちらつかせられ、不本意ながらクラブでバイトをしているつぐみ。そこにボーイに扮したスキアが現れる。スキアはつぐみに「お前に興味を持った」と馴れ馴れしく話しかけるが、つぐみは無視。

 そのとき客の一組、TV局役員の原島と夕立ゆうだち愛夏まなつ(以下 愛夏)の席でトラブルが発生する。粗相をした接客役の見習いアイドルを難詰する愛夏。そこに割って入るつぐみ。愛夏と一触即発の空気となるが、スキアの魔術で事なきを得る。


・1-3 契約締結:3000~4000字

 バックルームで、スキアは己の正体を明かす。都市伝説として悪魔の存在知っているつぐみだが、半信半疑でいる。

 スキアは使い魔に調べさせたつぐみの身の上を語り、アイドルをやっているのは復讐のためではないかと言い当てる。それを聞いたつぐみはスキアの話を信じ「つぐみをスターにする代わりに、人生最高の瞬間にその魂をもらう」という条件で仮契約を交わす。


・1-4 枕営業の誘い:3000~4000字

 スキアの手練手管で、違約金なしに事務所を辞めることが出来たつぐみは、スキアの開いた個人事務所に籍を置いた。

 つぐみは、幼馴染たけるが生きた証でもある彼の曲とピアノ演奏で名を売りたいと語る。だがスキアは「思い上がるな」と一蹴し、つぐみに枕営業を迫る。しかもその相手は、クラブでトラブルを起こした原島だった。つぐみは激昂するが、スキアの挑発されて、話に乗ってしまう。

 契約したことを後悔しながら、つぐみは指定されたホテルに向かう。

 

・1-5 ホテルへ:3000〜4000字

 原島の部屋で夕食を共にするつぐみ。セクハラ発言に辟易しながらも、芸能界の実情を探るため様々なことを聞き出そうとする。

 そんな中、話題は秘密クラブでの一件に及ぶ。同席していた愛夏もあのクラブの出身であり、アイドルグループTELL-ARIUMテラリウムのメンバーに推薦したのは原島だと明かす。原島は愛夏の野心と上昇志向を誉め、彼女を目指せとつぐみに語り、シャワーを浴びるように促す。


・1-6 ★シャワールーム:3000~4000字

 シャワールームの鏡の前で、つぐみは自分の思いを再確認する。たけると自分の無念を晴らすため、どんなことでも犠牲にする。そう強く思い、芸能界への憎悪の炎を、胸の内に燃やす。

こうして覚悟を固め、原島の待つベッドルームへ向かおうとした時、目の前にスキアと彼に付き従う使い魔のリリアが現れる。リリアはつぐみそっくりの姿に変化しており、彼女の代わりに原島の相手をしようとしている。

 自分の覚悟に水を差されたと思ったつぐみは、抗議するがスキアの悪魔の眼光に射すくめられ、ホテルを後にすることとなる。


・1-7 ★契約成立:6000~7000字

 不満と怒りを抱きながら、つぐみはホテルの前で一夜を明かす。翌朝、現れたスキアに怒りをぶつける。スキアは再び、悪魔の眼光でつぐみを睨みつけ黙らせようとするが、つぐみは屈さず「対等に接しろ」と凄む。その気迫が気に入ったスキアは、つぐみへの態度を軟化。今回の件の真意を語る。

 つぐみに枕営業を消しかけながら、途中でリリアと入れ替わるという、回りくどいスキアの行動には、3つの理由があった。1つ目はつぐみの覚悟を試すこと。2つ目はリリアの力で原島をハニートラップにかけ傀儡とすること。そして3つ目は、魂を奪うまでつぐみには処女でいさせる、というものであった。

 処女の魂を吸収することを美食に例えるスキアに嫌悪感を抱くつぐみ。だが、原島を嵌めた手腕を認め、スキアと正式に契約を結ぶことにする。


■第2章

・2-1 炎上:3000~4000字

 悪魔アムドゥスキアスと契約して半年。つぐみは炎上していた。

 リリアによるハニートラップを駆使し、つぐみのメディア露出は飛躍的に増えたが、それ故に「ゴリ押し」の評価を受けてしまう。さらにトーク番組などでのぶっきらぼうな態度も反感を買い、雲梯つぐみの評判は地に落ちている。

 スキアは「そこらの悪意よりもお前が抱く復讐の炎の方がはるかに強いからこう言うやり方ができる」と、炎上でつぐみが潰れる心配を全くしていない様子。

 一方つぐみは、こんなやり方だけでのし上がれるほど芸能界は甘くない、と危機感を抱く。


2-2 好転:6000~7000字

 つぐみはスキアの使い魔でマネージャー役のレヴルと共に全国各地のストリートピアノに出没し、演奏をしていた。スキアの真意がわからない事をレヴルに愚痴るつぐみ。レヴルは「主人の行動には全て意味がある」とつぐみを励ます。

 そんな時、つぐみのSNSアカウントから、彼女の演奏を撮影した動画が発信される。これまでの全国行脚で撮られてきた画像や動画が「目撃報告」として投稿が続き、つぐみの話題はトレンド上位に昇る。

 やがて、全国どこのストリートピアノに赴いても大勢の観客に迎えられるようになる。「TVやネットで叩かれていたアイドルが、地元に来てみればものすごく好印象だった」という認識を多くの人が抱くようになり、つぐみの評価は好転していく。


・2-3 ドラマ撮影:5000~6000字

 つぐみに映画撮影のオファーがある。それは今人気絶頂のアイドル、初虹風乃の主演の作品で、ロケ地のピアノラウンジで本人役として演奏するというものだった。

 一回限りのカメオ出演だが、スキアは最大のチャンスがやってきたと喜ぶ。これをきっかけに風乃と仲良くなり、TELL-ARIUMのライブにサプライズ出演するのが、復讐への最短ルートだとつぐみに説明する。

 そんなうまくいかないと思いつつも、つぐみは風乃への接近を試みる。が、それをよく思わない愛夏に妨害される。どうしようか考えあぐねていると、たまたまホテルの外で風乃が母親と口論しているのを目撃。それがきっかけで、つぐみは風乃の部屋に招かれる。


・2-4 風乃の部屋:4000~5000字

 風乃の部屋には、作曲用の機材や楽器が運び入れられていた。このロケ期間中に、風乃はアルバムの収録曲を完成させないといけないという。母親の意向で、撮影以外はこの部屋に軟禁状態であり、それが口論の原因だと語る。

 つぐみはたけると作曲していた時のことを思い返し、仕事のことを抜きにしてただ演奏を楽しむことを提案。二人はセッションをする。

 久しぶりに心から演奏を楽しんだ風乃は、つぐみに心を許し、自分は母のロボットに過ぎないこと、生き別れの父や弟のことなどを語る。そして彼らがこのロケ地に近くに住んでいることも、母が自分を軟禁している理由だと推測する。


・2-5 人探し:5000~6000字

 翌日つぐみは、撮影現場を離れ、風乃の家族探しを始める。

 狼に変化したレヴルの嗅覚によって、風乃の弟・村雨大地はすぐか見つかった。夜の街で不良仲間と遊び歩く大地に、つぐみは声をかける。最初は愛想よく応対した大地だが、風乃の話題になると態度が一変する。つぐみは不良たちから「アイツの前で家族の話はタブーだ」と聞かされる。

 拒絶されたものの、その豹変ぶりに何かを感じたつぐみは、カラスに変化したレヴルに、大地を尾行させる。


・2-6 大地と風乃:6000~7000字

 尾行の結果、大地は学校、バイト先、夜の街で全く別の性格を使い分けていることが判明する。それは、家族が離散する前に、母親によって叩き込まれた、俳優としての生き方によるものだった。日常生活でも演技をし続ける大地を案じるつぐみ。そして素の表情を引き出せるのは風乃だけと考える。

 スキアは、二人を合わせるために大地を拉致。あまりにも直接的な手段に呆れるつぐみ。スキアは「この場合は最も効率的」と平然としている。

 自分を捨てた母や役者としての自分を否定する父への恨み、そして姉へのコンプレックスなどを吐露する大地。つぐみは彼を説得する。

 再びロケ地。撮影の合間に、つぐみは風乃をこっそり連れ出し、大地に会わせる。数年ぶりの再開は短かったが、姉弟の心に大きな安堵感を与えた。そして乃は、つぐみに信頼を寄せるようになる。


・2-7 スキアの裏取引:2000~3000字

 スキアは、風乃と大地の再開の写真を、パパラッチに撮らせていた。それを風乃の母に見せ、「トップアイドルが男と密会している」としてマスコミに流すと脅す。否定するためには、二人が姉弟であることと家族離散の事実を公表しなくてはならない。どちらに転んでも風乃のイメージに傷がつくと判断した母は、スキアと協定を結ぶ。

 これによってつぐみは、TELL-ARIUMライブのサプライズゲストに選ばれ、風乃のソロアルバムに、つぐみの曲を収録されることとなる。


■第3章

・3−1(顔合わせ)2000~3000字

 TELL-ARIUMのライブに向けた顔合わせ。風乃はつぐみと同じステージに立てることを喜ぶが、他のメンバーには歓迎されない。特に愛夏は敵意を剥き出しにしてくる。この顔合わせで、センターである風乃は他のメンバーから敬遠されており、リーダーシップを発揮しているのは愛夏であるという、グループ内の微妙な人間関係を知る。


・3−2(襲撃)6000~7000字

 スキアと今後の作戦を練るつぐみ。愛夏の魂胆は、ライブ当日までにつぐみに重大な失態を演じさせ、ゲスト出演の話を白紙に戻す事だと推測。さらにそのために執拗な嫌がらせをしてくるだろうと予想。スキアは、今後何かと障壁になるだろう愛夏をこの際潰してしまおうと考える。

 そんな中、つぐみが暴漢に襲われる事件が勃発する。レヴルの護衛によって襲撃は未遂に終わり暴漢を捕獲。スキアの拷問によってその正体がTELL-ARIUMのファンで、首謀者は愛夏であることが判明。その事実に激怒するつぐみだが、今このことが騒ぎ立てても、もみ消されるだけと判断。これを利用し、愛夏を陥れる策を展開する。


・3−3(反撃)4000~5000字

 翌日、TELL-ARIUM関係者に怪文書が出回る。それはつぐみの襲撃事件を告発するものだが、そこに示唆された犯人像は愛夏ではなく、TELL-ARIUMの別メンバー明日葉瞳であった。突然の告発に動揺する瞳。愛夏はこれを良いことに、もしつぐみが訴え出たとしても彼女をスケープゴートにすれば良いとほくそ笑む。そして、瞳と他のメンバーの間に溝が生じ始める。

 そこに付け入るようにつぐみは瞳に接近。瞳を疑っていないことと、全ては愛夏が仕組んだことであると説明し、瞳を協力者に仕立てることに成功する。さらに瞳から、愛夏の弱みを聞き出す。それは愛夏が風乃に本気の恋愛感情を抱いているというものだった。


・3−4(愛夏の自滅)5000~6000字

 襲撃事件からしばらく経った後、愛夏は瞳から疑いを晴らすのに協力してほしいと泣きつかれる。最初は瞳を見捨てるつもりだった愛夏だが、つぐみを追い出すための手駒にしようと考え直し、彼女の呼び出しに応じる。

 瞳を待っている間、愛夏はつぐみと風乃を目撃。その様子は恋人同士のように仲睦まじく、愛夏は嫉妬の炎を燃やす。二人の後を追う愛夏。そして彼女たちが抱き合い唇を重ねているのを見つける。発狂した愛夏はつぐみを襲撃。馬乗りになって殴りながら、呪いの言葉と風乃への歪んだ情愛を叫ぶ。

 そこへ瞳が他のメンバーやマネージャーを連れて現れる。彼女が連れてきたメンバーの中には、今つぐみと一緒だったはずの風乃の姿もあった。驚愕し、最初にいた風乃を見ると、そこにいたのは全く別の女性(リリア)だった。

 こうして衆人環視、しかも風乃やマネージャーまで居合わせる中で凶行に及んだ愛夏は無期限の謹慎となり、つぐみを妨害する者はいなくなった。


・3-5(ライブを控え)3000~4000字

 ライブに向けて練習するつぐみと風乃。風乃は愛夏が起こした騒動にショックを受けているが、それでもなおライブを良い物にしようと励む。つぐみも、最終目標に向かって大きな一歩を踏み出したことに気が高ぶる。

 そんな中で、スキアはつぐみに契約の確認を確認する。「人生最高の瞬間と感じたときに魂を貰う」というスキアの要求を、つぐみは改めて受け入れる。


・3-6(ステージ)5000~6000字

 ついにライブが始まる。サプライズゲストとしてステージに立つつぐみ。これまで経験したことのない何万人という観客の前で、演奏を始める。風乃とのピアノの連弾。演奏する曲は、かつてたけると奏でていた曲だった。大勢の観客にその曲を届けられたことに感極まるつぐみ。そして一瞬「今が人生最高」と思いかけてしまう。

 すんでの所で復讐心を取り戻し、まだ自分がいる場所は過程に過ぎないと思い直す。演奏終了後、「もう少しで楽に魂を奪えたのに」と残念がるスキア。しかしその言葉とは裏腹に楽しそうである。こうして、つぐみの復讐は続いてゆく。


■エピローグ:2000~3000字

 謹慎中の愛夏は、ライブの配信を見ていたがやがて忌々しそうにスマホを放り投げる。そして気晴らしのために外へ出たところ、謎の青年に声をかけられる。

 青年は、愛夏にTELL-ARIUM脱退を勧める。そして自分のプロデュースするユニットでともにスターになろうと唆す。すでに風乃の弟、大地も彼の呼びかけに応じてユニットに入る意向だという。青年は自らを「天堂たける」と名乗る。その隣には、彼と契約した悪魔の姿があった(次巻へ続く)

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