臆病者は春と散れ

池田春哉

第1話

 今日から私はあなたの彼女です。

 つきましてはまず、うちのクラスの時間割、バイトのシフト、他諸々のスケジュールを共有するね。便利なアプリあるからあとで一緒にwifiあるとこでダウンロードしよっか。

 ああ、でもあなたのスケジュールは共有しなくていいからね。私のことを教えてあげたいだけだから。さっき『これから私のこと色々知っていきたい』って言ってたでしょ? 

 さ、あとは何が知りたい? あー住所と郵便番号は要るよね。電話番号はもう知ってるし。ついでに行きつけの美容院とファミレスも一緒に送っとくよ。家族構成と家系図もあとでメールするね。最近飼い始めた文鳥の名前も書いてある最新版だから。

 他に教えられることといえば身長と体重と座高と足の大きさくらいかな。でも恥ずかしいから絶対他の人に見せちゃダメだからね! パスワードかけたファイルに書いとくから誰にも見られないとこで開いてよ。

 パスワードは、そうだなあ。せっかくだし交際記念日の今日の日付にしとくね。私たちだけの秘密だよ?

 あと他には────ん、どうしたの? なんか思ってたのと違う? なにそれどういうこと。

 ……え、急に好きじゃなくなった? えっ、さっき告白してきたのに? なにその急降下。え、ちょっと、やだ待ってどこ行くの。

 ねえ待ってよ、待ってえぇぇーっ!

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