第7話 助けにきたAランク冒険者

「俺たちはAランク冒険者パーティー”ビバレント”。たまたま通りかかったこの村の村長に話は聞いた! 俺たちにキングゴブリン討伐は任せてくれ!!」


突然、20人近くいる冒険者パーティーが村にやってきた。


その手にはギルド発行の冒険者証明があり、確かにAランクと書いてある。


……なんだ、必死こいてこれからあの魔術書の内容をメモする予定だったけど、Aランク冒険者が助けてくれるのであれば必要ないじゃないか。


俺は村の未来が守られたという安堵感で胸がいっぱいになった。


「とりあえず村の皆さん集まっていただけますか? キングゴブリンは強力な魔物ですので、皆さんにも協力をしていたかなければなりません」


恐らくこのパーティーのリーダーである、金髪で長身のイケメンがそう呼びかける。名前はアーガスというらしい。


――ほどなくして村の全員が広場に集まった。


「村長、これで全員ですか?」


アーガスは村長に尋ねる。


「全員そろっております」


村長の返事を聞いたアーガスは仲間たちに目で合図を送る。


するとビバレントのメンバーは村人を中心にその周りを囲む。


――なんだか少し変だ。


「んじゃ、依頼料として1世帯10万ゴールドいただこうか」


誠実そうな顔から一遍、意地の悪い顔に変わったアーガスは突然そんなことを言い出した。



 「――10万ですか、私たちの村はそこまで裕福ではないので流石にそれは……」


村長がそ言うと。


ビリート痺れよ


アーガスは村長に魔法をかけ、村長はぐぁっと叫び声をあげてその場に倒れこんでしまう。


一瞬にして村人全員に緊張が走る。


「今から1世帯の代表一人ずつ家に帰って金を集めてこい。妙な真似してり逃げたと判断したらソッコー殺すんでよろしく」


アーガスは仲間に合図を送ると仲間は一人ずつ引っ張りだして取りに行かせる。



 「――全員終わったな。じゃこの箱に入れてもらおうか」


アーガスは自身が座っていた木箱を軽く二回蹴る。


我が家はレイアさんに金庫の場所を聞き、俺が代表として家に帰った。


きっとあの魔法を使えばこのゲスをぶっ飛ばせるんだろうけど、村のみんながここにいる以上、ここで戦闘を始めたら無事じゃすまないだろう。


これはそういうことをさせないための人質なのだと気づかされる。


そんなことを考えている間に村のみんなは続々と木箱に皮袋に入れたお金を入れ込む。


その中にこの村に住む5歳の少女ミィの姿があった。


彼女の手に持っている皮袋は明らかに他のみんなが持っている物よりも小さかった。


そしてアーガスはそれを見逃さない。


「おい、ガキ。それ10万ゴールドないだろ?」


ミィに詰めよる。


「あ、あのミィのおうちはママと二人しかいなくて……ママは今病気だからお薬買わないとだから、おうちにあるお金これだけ……です」


ミィは俯きブルブルと震えながらか細い声でそう答える。


それを聞いたアーガスは微笑みながらミィの頭をなでる。


「そうか、家族のために一人でここに来たんだな。えらいぞ」


ミィが少し安堵したような表情をした瞬間――


ゴッという鈍い音が広場に響く。


アーガスはミィを殴り飛ばしたのだ。


「話聞いてなかったのか、ガキ。1世帯10万だ。それ以外認めないんだよ」


アーガスは血を流し痛みに泣き叫ぶミィの頭を踏みつける。


――限界だ。


きっと村のみんなも同じ気持ちだったのだろう。


みんなしてアーガスに飛び掛かろうとしたが――


ビリート痺れよ


アーガスの仲間による四方八方から飛んでくる麻痺魔法によって、みんな動けなくなってしまう。


「バカな連中だ。こんなガキ1人のために死のうとするとは……まぁいい、いい見せしめだここでこのガキを殺すとしよう」


やめろ、やめろ!!


口が痺れてその叫び声すら上げられない。


その時――


ガァァンという大きな音が村中に鳴り響く。


その音の方向は村の門の方だった。


地鳴りのような叫び声が聞こえてくる。


嘘だろ……あと2日はかかるはずだ。


門にいたのは青い肌に3メートルはある巨体。


遠くからでもそのまがまがしさが伝わってくる。


キングゴブリンだ。



《あとがき》

この作品が気になった方はぜひ、評価、フォロー、コメントしてくださるとすっごく嬉しいです!


次の話は10月30日日曜日の20時46分に投稿予定です。


タイトルは変更しました。

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