第22話
「これ! 今度あるんだけどよ」
嬉々として梶原が見せてきたスマホの画面には、ピーロランドのコラボショップが東京で限定開催されると言う情報が表示されていた。成程、今度はこれに行ききたいってことか。
「付き合っても良いけど、どうにも割に合わないわ。梶原の行きたいとこばっかに付き合ってるじゃない」
「そう言うなよ。市原が行きたいところがあるときは絶対付き合うから」
「私は別に付いて来てもらわなくても、一人で満喫できるけど?」
梶原は鳴海の推しに理解がない。同性という事もあり、やはりBLという壁は梶原にとって高いようだった。そう思うと、この契約、梶原に一方的に有利だな?
なんて疑問を抱いている
「まあいいわ、貸しにしとくから。いつか困ったことがあったら助けてよね」
「それは勿論、クロッピに憧れるものとして当然」
生徒会室を出てすぐの廊下でこそこそと話をしていたら、どうやら同じく生徒会室を出てきた栗里と清水にその様子を見られていたようだ。栗里が、うーん、と面白そうに鳴海と梶原を観察してこう言った。
「やっぱり梶原と市原さんって、恋人同士には見えないんだよなあ……。性格が違い過ぎて、どうにも接点が見当たらない。梶原が市原さんに惚れてるっていうのも納得できないし、市原さんがどうして梶原を好きなのかも理解できない。君たち、お互いの何処を好きになったの?」
そもそも論か。そこを突かれると痛いんだけどな。
「恋人同士の内情を、外野に触れて回る必要があるかな」
鳴海が栗里を牽制すると、栗里は肩をすくめて笑った。
「疑念が払しょくされないままになるだけだけど?」
明らかに挑発を意識した言葉に、梶原がけれど冷静に応じる。
「誰に疑問に思われようが、お互いだけが分かってればいい気持ちってあるだろ。お前そんなことも分かんねーのかよ」
栗里が肩をすくめて諦める。その様子を見ていて思いついた。
もしやこの二人、鳴海というモブを挟んだカプが成立してしまうのではないか? モブを取り合っているうちに、お互いの負けん気で駆け引きするケンカップルのようなBLが成り立ってしまう!!
その場合はどっちが攻めだ? 梶原は行動力もあってガキ大将がそのまま高校生になったような奴だけど、栗里と並ぶと意外と頭脳派の栗里が攻めになるのかもしれない。腕力勝負のガキ大将が頭脳派の攻めに論破されて……、なんて、結構二次創作で見てきたな!? いや、いっそ正攻法で梶原が攻めってどうだろう? 頭脳派栗里は梶原の直情的な感情表現にほだされていって、どんどんふにゃふにゃになっていく!! これは王道だわ!!
……などと鳴海が妄想してにやにやしていたのをどう見たのか、梶原が呆れた顔で、帰るぞ、と鳴海を促した。
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