第20話
*
十月になって、生徒会の選挙が行われた。昨年度に引き続き梶原は立候補で、鳴海は推薦で、それぞれ生徒会長と副会長に就任した。他にも、会計には栗里、書記には清水が新たに就任した。会計に推された栗里が、責任感と行動力だけはあるから、と推薦したのが清水だった。
かくして、生徒会室で初回の顔合わせが行われた。鳴海は栗里を介して清水を認識しているが、梶原と清水は初対面だ。そんな清水は、初対面の梶原に早速怒鳴られている。
「なーにが会長らしく、だよ。俺は俺の生きてきた生き方があんだよ。そもそも立候補した俺と、推薦のお前では意気込みだってちげーだろ」
会長席に座って、足を机の上に投げ出している横柄な格好のまま、梶原は清水に言い放った。
「立候補だろうと推薦だろうと、全校生徒の信任を受けてる身は同じです! それに、生徒会長の素行が悪いなんて、聞いたことない!」
「素行じゃなくって、態度な、態度。そこ間違えんな」
ぴゅっと手元の消しゴムを投げて、清水の額に当てた梶原はやはりスポーツ万能だ。どうやったらあの小さな消しゴムが、清水の額という、これまた狭い所にヒットするのか。
「も~! 栗里先輩、あの人になにか言ってやってください! 態度も性格も成績も、絶対栗里先輩の方が会長に適任なのに!」
「それは無理。だって僕、市原さんを人質に取られてるからね。梶原と市原さんをめぐって正々堂々男の勝負をするのは良いけど、清水の機嫌を取るために梶原を引きずり下ろして市原さんの好感度下げるのは嫌」
「ええ~、先輩! なんで恋人いる人が良いんですかー!!」
「清水が自由の中から選んで僕を好きなように、僕だって自由の中から好きな人を選ぶんだよ。駄目なんて言われることじゃないと思うけどな」
飄々とした態度で清水をかわす栗里は、梶原よりも癖がありそうな人物だな、という印象だ。大体、恋愛を狩猟本能と同じだと言う時点で、かなりおかしい。それとも鳴海が知らないだけで、一般の男子ってそんなもんなのか?
疑問に思いつつ、これが二次創作だったらどうだろう、と思いを馳せる。いい加減な生徒会長に有能な会計。思い付きで大雑把な計画を立てる会長の尻拭いをする為に、敏腕会計が予算のつじつま合わせに奔走する……。ピッシブにもありそうな、如何にもな組み合わせだな! これを神絵師が漫画に起こしたらどんなに楽しいだろう!? などと思いながら閉会を宣言する。
「では、第五十八代生徒会第一回生徒会は、再来週の金曜日開催という事で、皆、よろしくお願いします」
各自が筆記具を仕舞って席を立ちあがる。鳴海も帰るつもりで立ち上がった。……と、その時、ちょっとノートの角が斜め前の梶原の机の上に載っていたスマホに触れてしまい、梶原のスマホが床に落ちた。ガコン、という鈍い音と共に、プラスチックのスマホカバーを付けた梶原のスマホがスーッと床を滑る。
「あ、梶原。スマホ落ちたよ」
栗里がそう言って、自分の席の前に滑って来た梶原のスマホに視線をやった。栗里は机から身を乗り出して、親切に梶原のスマホを拾おうとした。その時鳴海は見た。梶原の顔を。しまった! ヤバい! という顔をした、梶原の顔を。この顔を見るに、きっと、会議中に今まで撮り溜めた画像フォルダを眺めていたに違いない。……そう、沢山のクロピーの写真を……。
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