契約カップルというもの
第4話
*
「ねえ、なるちゃん! 梶原くんとお付き合い始めたってホント!?」
昼休み。鳴海が入学してから友達になった生田由佳とお弁当を食べていると、由佳からそんなことを言われた。
梶原と鳴海の交際は瞬く間に二年全体に広まった、らしい。……もしかすると上級生にも伝わっているかもしれない。なんせ、梶原によく会いに来ていた先輩の数がめっきり減ったのだ。当然、同学年の女子のお呼び出しも減っている。梶原の虫よけとして、鳴海はこれ以上ないというくらい優秀な働きをしていた(ただし、今のところ『付き合い始めた』という事実があるのみだ)。当然、梶原からは裏で感謝されたが、鳴海に対する横柄な態度は変わらなかった。
梶原は、裏の顔さえ知らなければ、明るくムードメーカーでリーダーシップもあり、スポーツは万能、成績中の上、ルックスは野性味あふれるカッコよさ、という男子らしい。鳴海にはその良さは分からないが(だって鳴海にとって推しキャラであるウイリアムとテリース以外は、どんなイケメンだとしても、芋栗カボチャならぬ道端の雑草くらいにしか思えない)、一般的なJKにはモテるタイプの男子だったらしい。品行方正、成績優秀かつ人当たりのいい鳴海はその外面で、周りの女子が好意を持っていた梶原を彼氏にしたにしては、女子特有の嫌がらせなどはなく過ごしていた。それもこれも、梶原が女子たちに後に尾を引くような問題を起こしてこなかったからなのだとは、後から気付いたことなのだが、まあ腐女子生活が長い所為で、普通の男子の気遣いなどに素早く気づく事なんか出来ないのである。
「梶原くん、モテ要素凄いけど、なるちゃんが彼女なら誰しも納得だよねえ。なるちゃんと梶原くんはタイプ違うけど、美男美女で文句なしだし……」
由佳の賛辞に言葉も出ない。主に、裏の顔を知っている梶原への賛辞に対する意味だ。
「そ、そうかな?」
「そうだよ~。だって、今年は梶原くんとなるちゃんが同じクラスって言うだけで、神采配って言われてるのに……。でも、私、なるちゃんのそういう、自分のことを鼻に掛けない所、大好き」
癒し系美少女、という言葉がぴったり当てはまる由香からの言葉に、鳴海も脳内でデレデレした。
「私も由佳の事好きよ。一年の時、総代だって言うだけで遠巻きに見られてたのに、声かけてくれたの、嬉しかったんだから」
鳴海がそう言うと、由佳は、わあ、そうなの? 勇気出して声掛けて良かったあ、などとかわいいことを言った。
(あ~、由佳に彼氏が出来るなら、絶対梶原みたいなあくどいやつは却下だわ~。そうだな、ビジュアルと性格でいったら、栗里とか良いんじゃないかな。あの人だったら由佳のこと絶対大事にしそうだし、やさしくて紳士な感じに見えるから、由佳を絶対不幸にしなさそう……)
鳴海の大事な親友の由佳には、絶対良い彼氏が出来て欲しい。不幸に泣く由佳の顔なんて絶対見たくない。鳴海はそう思いながら、お弁当箱のふたを閉めた。
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