砂糖部の佐藤さん

ぐらにゅー島

何、砂糖部って。

例えば、高校に入学する。

大体、先輩からの部活動勧誘とは盛んなものである。

だって、そうだろう?部員がいなくては廃部になってしまうから。




「砂糖部!砂糖部に入りませんかー?」


僕が学校から帰ろうとすると、部活動の勧誘の声がした。大変そうだなぁ、とは思うが僕は高校では帰宅部を貫くつもりなのでスルーである。

「あ、違います!茶道部じゃないです!…はあ。」

もしアニメだったら、チラシが春風に乗って飛んできたりするんだろう。ビラ配りをしている、廃部寸前の部活動所属の美少女とであったりするかもしれない。

「あ、チラシがっ!待ってー!」

さっきからあっちが騒がしいな…。って、え?

…顔面にチラシが飛んできた。ベシッと音を立てて顔に張り付く。地味に痛い。


「あ、ご、ごめんなさい…!大丈夫ですか?」


チラシを顔から剥がすと、目の前には僕より頭一つ分ほど小さい女子生徒がいた。艶やかな黒髪は二つ結びにされており、大きな黒ぶちのメガネがなんだか垢抜けない印象を与える。


「…じゃ、コレ。」

僕はチラシを彼女に渡すと、自宅に帰るべく校門に足を向けた。

「え…⁉︎ちょいちょい、え、あの、え⁉︎」

しかし、手を掴まれてしまい逃げられなかった。

「いやあの…。なんですか?」

「え、だってこんなにツッコミどころ満載でスルーされることある?」

「あります。」

「あ、そっかー。…ってちょい!帰んないでよ、待って!」

もーっと頬を膨らませると、僕の前に仁王立ちして見せてくる。この人随分グイグイくるな…。

「君、砂糖部入らない?」

「茶道部って…。女子勧誘してくださいよ。」

「違うって、砂糖部!」

彼女はグイッと、僕の目の前にさっきのチラシを押しつける。

「…砂糖部?」

「そう!砂糖部!」

「…。」

なんかドヤ顔されたが、なに、僕なんの勧誘に捕まってるの?

「じゃ、体験入部一名入りまーす!」

「いや、入らない入らない。」

「どうせ君、この後家帰ってもアニメ見てラノベ読むだけでしょ?」

なんでバレてるんだよ、初対面なのに。


「…あの、聞きたいことがあるんですけど。」

「ん?なーに?」

「どうして4月なのにハンデイ扇風機持ってるんですか?しかも風強いやつ。」

分厚いブレザーを着た彼女のポケットの中に、絶対季節感違うものが入っていた。

「…暑くってさー?」

「いや、ブレザー脱げよ。」

ツッコミの血が騒いで、l思わず乱暴な言葉を使ってしまった…。でも、まさか。

「今日、風もなくて過ごしやすい天気ですよね。」

「…?うん、そうだね。」

キョトンとした表情で彼女は頷く。

「なんでさっき、僕の顔にチラシが飛んできたんだと思います?風が吹いてもいないのに。」

チラシは、飛んできた。


「先輩、わざとですね?」

彼女は全力で僕から目を逸らした。

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