助けてくれたのは隣の席の君

ゆる

第1話 わかりやすい君のノート

この春、私は高校生になった。やっと、高校生になれたと感じた。中学の頃は不登校の期間が半年あり、塾には通っていたが、授業においつくのに精一杯だった。だから、入るまで長く感じたし、高校でも授業においつくのに必死になるだろうと思う。不登校だった理由だが、私は視線恐怖症だ。他人の視線が怖く、他人の目を見て話すことができない。酷い時はずっと誰かに見られてる感覚すらある。高校生になってもなお、授業を休んで保健室に行くことが多い。そして休む度に隣の「谷戸雪斗」にノートを見せてもらう。彼は「はい、ノート。授業で分かりずらそうなところは分かりやすく図にしたり短くまとめたりしたから。それにあのとき…」といってなぜか少し照れながらノートを渡して姿を消す。あのときってなんだろう。少し疑問に思いながら目で追っていると人影の方へ消えていったから、友達にでも呼ばれたのだろう。雪斗は友達が多く人気がある。容姿もいわゆる「イケメン」で目は大きく唇はうすく品性があり、顔も小さくキレイな輪郭をしている。そういえば、どこかで見た事のある見た目だな。

私は、次の日の教室で隣の谷戸にノートを返した。「ありがとう、谷戸。」「おう。」と短い返事をもらい谷戸は体の向きを前へと変えた。谷戸は本当に親切だと感じた。中学の頃は、授業を休むたびノートをみせてもらっていたら相手の方がイライラしていたからだ。思い出して辛いなと心がぎゅと痛んだ。

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