母の巻きずし(食べ物随筆)

北風 嵐

第1話 母の巻きずし

『母の巻きずし』

 死ぬ前に、食べたいもの。と云う番組があった。私は迷わずお題通りに答える。その母が巻きずしを作る様子を書こうとしたら、FBのお友達が見事にコメントに書かれいたので、それをお借りした。

 飯切に炊きたての御飯を入れ、合わせ酢をかけて、扇風機の風で冷まし、シャモジで切るようにおふくろが額の汗💦を拭いながら混ぜていましたね~❣家中、酢の匂いで今宵は巻寿司に違いない、❣絶対に!

 

 明日遠足と云う時は必ず巻きずし。小学校6年間それは変らなかった。夕食は当然巻きずし。お吸い物がついて刻みの紅生姜が小皿に添えられている。ちょっと変わってるとしたら沢庵が入っていることだった。僕は余り入れて欲しくないが、父のご指定だから仕方がない。巻きずしを巻いた日,

 父は母に「お前は俺を殺す気か」とよく言っていた。夜中が大変なのだ。僕も少し食べたくなって台所に行くと先客がある。父である。酷い時など、僕は必ず3本持って行くのだが、2本しか持っていけなかったことがあった。この時は母は「子供の分まで食べる親がおますか」と父に猛抗議した。「2本も食べたらじゅぶんやろが」と父が答えた。僕が3本食べる訳ではない。ほとんどの子は巻きずし弁当なのだが、お母さんがいない家の子はパンだったり、中には🍙の子もいる。1本は〈おすそわけ〉分なのだ。それから母は父でも食べきれないぐらいの本数を巻いた。父は心配なく夜中に食べることなった。それを「殺す気か」と云ったのだ(笑)。

 

 今でこそ吉川町と云えば「山田錦の里」と知られているが、僕がいた時は、中吉川村であった。遠足・運動会といえば、どこも巻きずしか、ぼた餅であった。父はここで自転車屋をやり、横がバス停なので母はお菓子や雑貨を売った。店を終えてからであるから、竈門を使っていた時代だから、私も火起こし、水くみと手伝わされた。遠足と云っても隣村の城跡(ほんまにあったんかい?と云う感じ)の高台から自分の村を望むだけなのだが、その石垣に足かけて食べる「巻きずし」が、こんな〈うまいもん〉世の中にあるかいと思えたのだ。


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