第50話 萌えの塊
「うへー、コンクリートいいわー」
あまりにもハイペースで走りすぎて、逆に体育の先生に止められて他のまだ走ってる生徒たちを尻目に休憩に入ってる俺たち。
岡田と駄べりながら走っていたので、そこまで実感はなかったけど、そこそこ距離のある学校の外周を他の生徒を何周も周回遅れにして追い抜いていった様子は中々にインパクトがあったらしい。
先生の立っているスタート地点に行くまでの速度も異常だったし、ここまでガチでやれば逆に止めるというのが分かったのは収穫かもしれない。
まあ、その割にはそこまで俺も岡田も疲労はなかったが、岡田は休めるのが嬉しいのか建物のコンクリートに寄りかかってその冷たさを堪能していた。
「あぁ……俺はこの子を嫁にしたい……」
「彼女さんに浮気報告しても?」
「ガチで許してください」
そもそも話したことも無いので、接点がないのだが、それでもそのうち話す機会もあるだろうし、その時のネタにしようかと思っていると、ふと校庭では女子が短距離走をしていた。
何人かづつで、走っているのだが、岡田の彼女は中々に速かった。
「彼女さん、運動得意なんだ」
「みたいだなー、俺にかまけてないで部活してもいいんだがなぁー」
「それだけ愛されてるんだよ」
そう言いながらも、俺の視線はジャージ姿の水瀬さんに向く。
いつものストレートヘアーから、ポニーテールにしてる水瀬さんは凄く可愛い。
そんな水瀬さんと視線があうと、恥ずかしそうに逸らしてから、はにかむ。
……なに、あの可愛い子。
そんな事を思っていると、水瀬さんの番が回ってきたのか位置について走る。
しかし……
「うわー、水瀬遅いなぁ……」
岡田の言う通り、典型的な女の子走りで凄く可愛いが、その速度は可愛さによって占められていた。
「まあ、得意不得意は誰にでもあるから」
「それもそうかもな」
その言葉にすんなり頷けるこいつは何気に大物なのかもしれないと思いながら再び水瀬さんに視線を向けると、大きく息をして呼吸を整えていた。
そうして落ち着いてから、再び俺の視線に気がついたのかまたしても視線を逸らしてから、皆に見えないように小さく微笑むと、恥ずかしそうに軽く手を振った。
……もうさ、仕草の一つ一つが完成された可愛さなので、俺はどうしたらいいのやら。
可愛すぎて、そのうち萌えが顔に出ないか不安になるが……うん、頑張って優しい笑みを心掛けよう。
そうして、水瀬さんのまた新しい可愛さに目覚めつつ、運動が少し苦手なのかもしれないという情報も入手できたので、俺としては初の体育の収穫としては十分と言えた。
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