第44話 席替え
「えー、一時間目の数学だが、川内先生が色々トラブって自習になったのでよろしく」
そんな担任の山本先生のお言葉を受け、クラスの大半が嬉しそうな表情を浮かべる。
まあ、憂鬱な月曜日の一時間目がそうなれば、大抵の生徒は嬉しいのだろうが、彼らと俺や水瀬さんでは自習の意味合いが違いそうなのが何とも言えないところ。
それにしても、何やら意味深なことを言う担任ですこと……川内先生は金曜日の日の初回の授業で顔は知ってるけど、この土日の間に何があったのやら。
「そんで、いい機会だから席替えだけしとくぞー。クジは使い回しがあるから、それを使うとして……委員長、副委員長、仕切りは任せた。その後は各自自習で」
……何故にこの流れで席替え?
「あの、先生。何故自習の時間に席替えを?」
水瀬さんが果敢にもそう尋ねると、山本先生は悪びれた様子もなく答えた。
「この前やろうと思ってすっかり忘れていてな。それに出席番号順は楽だが個人的には嫌いでな。トラウマが蘇るから、さっさと変えるに限る」
よく分からない理由だが、何にしても席替えはかなりチャンスと言えるし、上手いこと水瀬さんの近くを確保したいところ。
とはいえ、不正をするのはバレた時に水瀬さんの心象を悪くする恐れもあるし、俺としても正攻法で水瀬さんの近くを確保したいので、その辺は上手く知恵を絞るとしよう。
職員室から、クジを持ってくるとまずは人数分あるか確認してから、それぞれの数字を順に割り振って何番がどこかを決める。
それをしてから、早速クジの入っている箱を回して出席番号順に引いていくが、席替えとは高校生になってもテンションが上がるものらしく、謎の盛り上がりがあった。
「春斗、何番だ?」
「一番前だな」
「マジか、ご愁傷さまー」
とはいえ、悪い位置でもなく、教室の出口の近くの真ん前なので、後ろの席の人が黒板を見えないということにはならなそうだった。
何より……
「水瀬さん、お隣よろしくね」
「……ええ、よろしくお願いします」
まさかの一発目で水瀬さんの隣を引くことが出来た幸せはかなりのもので、席替えに興味のなかった俺からしたら内心は物凄くテンションが上がっていた。
水瀬さんも顔に出そうになるくらいには、喜んでくれてるようで微笑ましい。
「目が悪いとか、必要な交換は各自でしてくれ。んじゃ、それが終わったら一時間目は各自自習。以上」
そう言ってから、山本先生が完全に傍観の構えになると、少しクラスは騒がしくなるが、他のクラスは授業中なので邪魔しないように水瀬さんが注意して、俺がそれを補足するように連携したのは言うまでもないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます