第24話 遊びのお誘い

教室を出て、水瀬さんを追いかける。


先に帰った可能性も高いけど、その場合でもまだ追いつけると思いながら下駄箱に行くと、そこでは水瀬さんが靴を履き替えて、壁に寄りかかって立っていた。


まるで誰かを待ってるような……いや、100%俺を待っててくれたのだろう。


「水瀬さん」


声をかけると、こちらを向き、嬉しそうな表情を浮かべてから、慌てて元に戻して澄ました表情を作ってみせる。


でも、嬉しい気持ちを隠しきれなくて少し表情に出ており、何とも微笑ましいものだ。


「ごめん、待っててくれたの?」

「……いえ、待ってはいませんよ。少しここで景色を楽しんでいただけなので」


そう言いながら、校舎で遮られて壁しかない場所に視線を向ける水瀬さん。


それが可愛い嘘なのは分かりきってるけど、ここまで分かりやすい子は初めてかもしれないとさえ思えた。


何にしても、好ましいものだ。


「そっか。じゃあ、折角だし一緒に帰ろうよ」

「そうですね……分かりました」


ツンになり切れてないその様子が何とも可愛くて、ついつい笑みを浮かべてしまう。


「明日は休みだね。水瀬さんは何か予定はあるの?」


並んで二人で歩きつつ、そう尋ねると、水瀬さんは少し考えてから答えた。


「明日は良いお天気になるようですし、お洗濯物とお掃除が捗りそうです」

「そうなんだ。明後日は何かある?」

「いえ、特には……」

「じゃあ、良かったら明後日俺と二人でカラオケ行かない?」


ピタリと足を止める水瀬さん。


「えっと……蒼井くんと二人でですか?」

「うん、ダメかな?」

「ダメじゃないですけど……その……ふ、二人きりでカラオケってまるで、その……こ、恋人みたいに……思われるかも……」


モジモジとしながらそんなことを言う水瀬さんだけど、嫌がってる様子はないしとりあえず悪くない返事に俺は嬉しくなりつつ言った。


「水瀬さんとはもっと仲良くなりたいし、まだ授業もそんなに進んでない今の時点なら勉学にも差し障りはないから、良かったら付き合って欲しいんだ。実を言うと、大人数でカラオケってあんまり好きじゃなくてさ。本当に仲良しな人との方が楽しいと思うんだ」

「そ、それなら、まあ……」

「じゃあ、決まりだね。待ち合わせ場所と時間を決めておこうか」


ここまで猛烈に好きな人にアプローチをかけてるのは我ながら人生で初めてのことなのだが、それさえも楽しく思いながら水瀬さんと明後日の約束をする事にした。


まだ恋人ではないけど、デートのようなものなので俺としては凄く楽しみなのだが、誘われた水瀬さんも楽しみにしてるのが分かる様子なので、是非とも最高の一日にしようと心に決めるのであった。







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