第20話 女子力の高さ
「そうそう、委員長就任おめでとう」
話せてなかった一時間目の大事なことを言うと、水瀬さんは嬉しそうに微笑む。
「ありがとうございます。蒼井くんも副委員長になってくれてありがとうございます」
「お礼を言われるようなことでもないけどね。でも、こちらこそありがとう」
思わず微笑みあう。
なんて事ないけど、不思議と水瀬さんと心の距離が近い距離に感じられて悪くない気分でもあった。
そうして心を通わせてから、お茶を飲もうと視線を動かすと、ふと水瀬さんの彩りの良いお弁当が視界に映る。
「それって、水瀬さんの手作りだったり?」
「ええ、今日のは簡単なものですけどね」
相変わらず謙虚な様子の水瀬さん。
卵焼き、タコさんウインナー、野菜の和え物に、ミニトマトなどがメインのようだけど綺麗な卵焼きの形を見ると、普段から料理をしているのだろうとよく分かった。
バランスも彩りも良い綺麗なお弁当だけでも、水瀬さんの性格を良く表してそうだけど、もう一つ……その小さめのお弁当箱と食べてるペースから、水瀬さんが少食気味なのが何となく窺えた。
女子だと珍しくない量かもしれないけど、お菓子などを口にしてる様子もないし、本当にこの量で足りてるのだろう。
「どれも美味しそうだね。俺はそこまで料理得意じゃないから羨ましいよ」
「そうなんですか?」
「多少なら出来るけど、毎日作ってくる程の腕前と情熱がないんだよね」
中学までは、給食だったのでお昼の心配はしなくて良かったけど、高校には給食はなく、学食みたいな場所もなく、一応購買が少しあるくらいなので、お手軽なパンやおにぎりに頼ることになりそうではあった。
「私も夕飯の残り物を使ったりする事にはなりそうなので、あまり褒められたものではないですけどね」
「あれ?夕飯も水瀬さんが作ってるの?」
「ええ、まあ……。家族が皆、家事が苦手なので……。亡くなった祖母に色々教わって、ほとんどの家事は私がやってるんです」
家庭的……なんてレベルじゃなさそうだなぁ。
水瀬さんが嘘を言ったり、誇張してる様子は微塵もないので事実なのだろう。
「そうなんだ。水瀬さんは良いお嫁さんになりそうだね」
「ふぇ?そ、それって……」
「ん?ああ、いや、水瀬さんをお嫁さんにした人は幸せ者だろうなぁって思ってさ」
「そ、そうですか……そうですか……えへへ……」
照れ照れになる水瀬さんは実に可愛い。
ただ、その様子以上に俺は話す度に、益々水瀬さんに興味を持ったのは、この子の魅力故だろうと思えるから不思議だ。
未来が読めるわけではないけど、俺は恐らくこの子に益々惹かれると予言できてしまう。
そして叶うなら、水瀬さんの隣で……その幸せ者に、俺がなれたなら――
(まあ、焦らずゆっくりだね)
先の未来を想像しつつ、二つ目のパンを食べ終えて喉を潤しつつ、俺は水瀬さんの横顔を眺めるのであった。
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