第17話 委員長決め
本日最初の授業は、一時間目を丸々使ってのホームルーム。
学校に関する補足事項や、昨日説明しなかったような、そこそこ細かいけど大事な注意事項なんかがメインだけど、それとは別にもう一つ……決めておくことがあるようだ。
「んじゃ、まず先にクラス委員だけ決めるぞー。委員長と副委員長でそれぞれ一人づつ。行事なんかで率先してあれこれしてもらう面倒な役目だから、やりたい奴居たら手を上げろなー」
担任の山本先生が、そう言った瞬間に、水瀬さんが早速挙手をする。
その様子を見て、大抵の生徒が安堵してるのを見ると、率先してやる程旨味のない、面倒な仕事だとほとんどの生徒が思ってるのだろうと考えてしまう。
そんなことを思う俺は、中々に心が汚れてるのかもしれない。
少なくとも、こうして真っ先に率先して手を挙げた水瀬さんのような綺麗な心ではないのは確実だけど、人は自分に無いものを欲するらしいから仕方ないと結論付けておく。
「水瀬か。委員長と副委員長どっちだ?」
「他にやりたい人が居ないなら、委員長で」
「――だ、そうだ。委員長になりたい奴は手をあげろー。居なければ水瀬がクラスの委員長な」
シーン。
恐ろしいまでに誰一人として手をあげない。
この時点で、水瀬さんがクラス委員長になることは確定した。
そして、大半の生徒は残りの副委員長の座を自分でない誰かに押し付けたいと考えるだろう。
「じゃあ、委員長は水瀬に決定だな。おめでとう」
パチパチと拍手をする先生に、疎らながらも皆も拍手をする。
「んじゃあ、残りの副委員長だが……やりたい奴いるかー?」
そう言われて、大抵の生徒が反応しないのを確認すると、俺は不自然でない程度に、でも、水瀬さんに誤解されないようにそこそこ早く控えめに手を挙げてみる。
「他に立候補居ないなら、俺がやってもいいですか?」
「だそうだが、立候補居るか?」
再びの沈黙。
その沈黙をもって、俺の副委員長就任は比較的自然に決まったのであった。
「そんじゃ、委員長は水瀬。副委員長は蒼井になったから、クラス内の面倒事はよろしくなー。お前らが頑張れば俺が楽できるから期待してるぞー」
……もう少しオブラートに包んでもいいのでは?
そんな事を思いつつも、この担任の性格をある程度把握してきたので、仕方ないとため息をつきつつも、水瀬さんにさり気なく視線を向ける。
すると、こちらを見ていたのか視線があって、慌てて逸らしてから、少しソワソワしてから、ほんの一瞬、その顔に若干の照れたような笑みを浮かべて再び視線を教卓へと戻した。
うん、可愛い。
この子のためなら、高校生活を全てかけても構わない……そんな価値のあるその様子に、ますます学校生活が楽しくなる予感を抱きつつ、しれっと俺は副委員長として水瀬さんと自然に接する接点を確保出来たのだった。
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