第8話 図書室巡り
二人で図書室に来ると、まずは想像よりも広い図書室の構造に驚かされる。
学校の設計図を見て、他の教室関係よりも広いのは分かっていたけど、図書館と呼んでも差し支えないその規模は見事と言えた。
「色々な本がありそうですね」
嬉しそうな水瀬さんと図書室に入ると、とりあえず色んな場所を巡って面白そうな本を探してみる。
入学式当日なので、借りるのはまだ出来ないかもしれないから、下見といったところだろか。
「あ……」
ピタリと、水瀬さんがあるコーナーで足を止める。
そこには、一昔前の長編漫画などがあり、その中で結構メジャーな少女漫画に興味を示したものと思われる。
チラッと俺に視線を向けてくる水瀬さんに、とっさに近くの本棚から適当な本を取って、さも読んでるような雰囲気を出してみると、水瀬さんは俺が見てないと思ったようでその少女漫画をパラパラと読み始める。
大方、漫画を読むのに少し抵抗があるというか、人前で……ましてや、学校で読むなんてとんでもない――でも、読みたい、みたいな葛藤でもあったのだろうと予想できる。
確か、漫画の持ち込みはこの学校だと校則違反だったか……真面目な水瀬さんは既にこの項目を知ってるのかもしれないけど、にしても漫画の持ち込みは禁止なのに、一昔前の……それこそ、自分たちの親とかの世代の漫画が置いてあるミステリー。
まっとこと世の中とは不思議だけど、そういう事なのだろうと予想はつくし深く探る気もないのでスルーしておく。
「……」
最初は俺の視線を気にしていた水瀬さんだったけど、引き込まれるように漫画に没頭して読み進めていく。
「はわわ……」
少し恥ずかしいシーンで可愛い反応をしたり。
「……ぐすん」
切ない展開に涙ぐんだり、喜怒哀楽がとても分かりやすい。
立って読むのも、いつもならマナー違反とか言うかもしれないけど、集中していて忘れてるのかもしれない。
俺が見てるのに気づかずに1冊読み切ってから、満足気な表情を浮かべるけど、2巻に手を伸ばす前に俺が近くに居ることを思い出してハッとして、こちらに視線を向ける。
「ん?どうかしたの、水瀬さん?」
「い、いえ……なんでもないです……」
見られてなくて心底ホッとする水瀬さん。
うーん、これ全て天然なんだろうけど、にしても面白い子だ。
図書室で本を探すよりも、その図書室で色々してる水瀬さんを見てる方が楽しい今日この頃。
そこそこの時間になるで図書室で水瀬さんと一緒に居たけど、無言の空間でもこれだけ楽しめたのは人生で初めてかもしれないと思うのだった。
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