第25話 師匠と弟子

そんなこんなで。

すでに一ヶ月近く経っている。


金属弦はやっと出来上がった。

鉱石から金属を取り出して、それを熱加工。

細い糸状の物へ。

さらに金属ヤスリで磨き上げ、太さを均一に仕上げる。

表面に錆びにくい真鍮を塗って出来上がり。


言葉にしてみると簡単そうだが、実際には結構な時間と手間がかかった。

鍛冶屋の母娘が試行錯誤してくれたのである。

他にも金属製品を欲しがるお客さんはいっぱい居たのだが。

母娘は鉱石を持ち込んだオルを優先してくれた。


「はい。苦労したんだからね。

 大事に扱いなさいよ」

「もちろん、大事にするよ。

 だけど、弦って消耗品なんだよ。

 楽器を弾いてるとどうしたって傷んできちゃう。

 急がなくていいから。

 予備の弦もよろしくね」


「ええええっ!?

 ここまでヤスリかけるのって、結構タイヘンなのよ」

「ホントにあの鉱石、全部貰っていいのか。

 それなりの値段になるぜ」


オルは鉱石の箱を丸々鍛冶屋の母娘に渡していた。

金属弦を試行錯誤して造っても余裕で材料は残る。


「だから、弦の代金だってば」

「……そうか。

 なら予備も造ってやるから、たまに顔を出せ。

 アンタが来ると娘がご機嫌になる」


「な、なに言ってんの、母さん!

 アタシはただやりがいのある仕事だったから……」


そんな訳でやっと竪琴が万全の状態になったオルである。


その晩、上機嫌でオルは楽器をかき鳴らした。

幾ら弾いても飽きない。


「分かった。

 オルの演奏が上手いのは分かったから、そろそろ寝ようぜ。

 続きはまた明日な」

「うんうん。

 オルさんの竪琴とってもステキ。

 でもさすがに今日はもう遅いわよ」


夕食を食べてから、オルの演奏を聴いていたオヤジさんと奥さん。

最初はウットリと聴き入っていた二人だが。

いつまで経ってもオルは演奏を止めない。

すでに夜更け、さすがに止めに入った二人なのだ。


ケルとベルは既に寝ちゃってる。

ロスはマジメに聴いてるが、トキドキ瞼が閉じそうになってる。


納屋へと半分寝ている三つ子を連れて行くオル。

納屋に未だに泊めて貰っているのだ。


「ロス、訊いてみたい事があるんだけど……」

「なんですか、オル師匠」


「そう、それ。

 なんで師匠なの?

 僕のビスケットや演奏が気に入ったのなら。

 ファンかただの友達になりに来たでも良いじゃない。

 なんで師匠と弟子なの?」

「それは…………」

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