第97話

 爆炎祭が終わり体調が戻ると事件が起きた。


「大変です!地中からお湯が噴き出しました!かなり熱いです!」

「分かった。すぐに向かおう」


 現場に向かうとモグリンがシュンとしていた。


「モグリン、どうした?」

「お湯を掘り当てて水浸しにしまったせいで怒られると思っているのよ」

「怒らないから安心してくれ」


 お湯を触るとかなり熱い。

 ゆで卵が出来そうだ。

 湯量も多く農地がお湯まみれになっている。

 温泉の匂いがする。


 舐めて見ると毒は無さそうだ。


「モグリン、よくやったぞ!」

「きゅ!」


 ぺたんとしていたモグリンが膨らんだ。

 みるみる元気になっていく。


「きゅう~!」


「モグリン温泉の区画整理を始める!ここを農地から宿屋に変えてお湯の水路を作る!」


 モグリン洞窟とモグリン温泉、そしてフレイム国とシルフィ王国の交易地点としても機能している事を考えると相乗効果は計り知れないだろう。

 開拓を始めたばかりの土地で立ち退きを拒否する反対運動が起きにくいのもいいい。


「モグリン、計画が完成したら水路作りを手伝ってくれ」

「きゅう~」


 その日から温泉地開拓がはじまった。





 区画整理をして、温泉宿屋を7つ作り、今運営している宿屋に頼んで温泉宿屋に移動して貰った。


「ようやく落ち着いたか」

「アキ、頼みがあるのだけど」


 アーチェリーがモグリンに乗って来た。


「ん?」

「私が温泉に入るとモグリンはずっと外で待っているのよ。さみしそうな顔をしているわ」

「きゅう!きゅう!」


 モグリンは何かを必死に訴えている。


「モグリンも一緒に温泉に入りたいって言っているわ」

「湯量には余裕があるけど、そうだな、城が手狭になって来た。モグリンタワーを城から移転させるなら行けるかもしれない」


「きゅう!きゅう!」

「それでいいそうよ」

「すぐに城に行って来る」


 俺が城に向かうとモグリンとアーチェリーがついてきた。


「待ち切れないみたいだわ」

「きゅう!」

「城はそこそこ混んでいる。それと一回入ると他の用事で止められるから明日になるかもしれない」

「きゅう~」


 俺は城に入った。

 城の中はギルドと役場になっていて、多くの人が出入りする。


 俺が城に入ると文官が集まって来た。

 

「アキさん!ギルドがここ1つでは足りません!城の拡張を先に着手するべきです!」

「前話し合って決めた文官30人の登用が終わりましたがまだ人が足りません!更に人を増やしましょう!」


「それなんだけど城にあるモグリンタワーから引っ越しする予定なんだ。引越しが終わればモグリンタワーを改装して第二受付所に出来る。文官の登用は後何人必要なんだ?」

「とりあえず少なめに30人欲しいです。今教育中の文官もおりますので教育に時間がかかるのです」


「他には何かあるか?」


「建設の進捗が遅れています。新しい予定が入れば大幅な建築力不足に陥ります」

「先ほどの話と被りますが住宅の需要が足りません」

「最近働き過ぎで体調を崩す文官が多くなっています」

「城の会議室が足りず、廊下で会議を開いているのですが通行の邪魔になっています」

「役所の手続き待ちで3時間待たされると苦情が多く来ています」


「他にはあるか?」


「特に無し、問題は建築力不足と文官不足でいいのか?」


「そうです」

「そうだと思います」

「はい」


「建設については城に住んでいるみんなを出来るだけ移動させてスペースを確保して有効に使ってもらう事にする。後はクラフトに協力をお願いする手紙を書いてみる。文官不足については30人を追加登用して欲しい。採用は任せる。王に文官を出して貰えないかも手紙を書いてみる。手紙を書いたらモグリンタワーから引っ越しをする為のモグリンハウスを作る。用があったらそこに来て欲しい」


「「分かりました」」


 俺は城を出た。


 城を出るとモグリンがじっと待っていた。

 俺の言葉を期待している。


「モグリン、温泉付きのモグリンハウスを作るぞ」

「きゅう~!」

「ふふふ、とても喜んでいるわね」


「まだ作ってないからな。今からだ」


 俺はモグリンハウスの建設を始めた。




 モグリンハウスを作るとモグリンは毎日アーチェリーと一緒に温泉に入るようになったらしい。


 完全にモグリンが浸かれるほど深い温泉ではないがそこは気にならないらしい。

 アーチェリーと一緒に入りたかっただけか。

 後、一人で待っているのが嫌だったんだろうな。


 王とクラフトからの協力が断られたため、俺は新しい兵舎を城の外に作り、モグリンタワーを改装し、第二ギルドを作り、俺の住む場所をモグリンハウスの隣に建築してワッフルやプリンの部屋も文官に提供した。


 気づけば、俺の家は人通りから外れた温泉サウナ付きの別荘のようになり、プリン・チョコ・ミルク・ワッフルも俺と一緒に住む為に引っ越して来た。


 文官の登用も落ち着き、建築も一段落ついて建築能力も向上した事で俺がいなくてもこの街は回るようになっていた。


 ワッフルが俺の手を握った。


「人が寄り付かない隠れ家のような温泉館、いいですわね」

「皆で温泉に入りましょう!」


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