第62話

 今日の大戦が終わり自陣に向かうが、みんな元気が無い。

 みんな無理をしすぎたんだ。


 これ以上の連戦はさすがに厳しい。


 プリンが前を指差す。


「アキ!見て!」

「城だろ?クラフトたちが作ったんだ」


「凄いわ!こんなに早く!」

「そうだな、今日からは城の中でゆっくりしよう」


 クラフトがみんなを出迎える。


「今日のディナーは豪華なのだ!」


 城に入ると良い匂いがする。

 兵士が喜ぶ。


「すげえ!食べていいのか!」

「すぐ食べるのだ」

「今日はごちそうよ」


 人がたくさん死んで食料に余裕が出来たんだけど、言わないでおこう。

 兵士に対してサポートの数が多くなったのもある。


「アキ、すぐに会議だ」


 グラディウスが笑顔で言った。


「すぐに行こう」


 会議室に入ると前より広くなっている。

 その為今日は俺の隣にチョコとプリンもいる。


「お嬢様、私を監視するような目で見てどうしたんですか?」

「そういう事をしているからよ」

「ええ?どういう事ですか?言ってもらわないと分かりませんよ?」


 チョコはぶりっ子スタイルでとぼける。


「お嬢様、私がアキ君にナニをしたんですか?言ってください」

「い、言わせないでよ!」


 昨日チョコと寝た事を、プリンは知っているのか。

 チョコとプリンのやり取りで皆笑顔になった。


 俺達の後ろに座る変態仙人・マッチョ・ミルクも笑っている。

 会議室に食事が運ばれてきてみんなが食べ始めるがマッチョはテーブルに置く前に肉を取って食べていた。


「おほん、会議を始める!まずはクラフト、城の完成ご苦労だった」

「いや、いい」


 クラフトは『私は命をかけて戦ったみんなより安全な場所にいる。だから無理をして城を完成させるくらいは当然なのだ。そして城の完成が1日遅れた事で死者数が増えてしまい申し訳ないと思っている。これからも出来る限りみんなの為に尽くそう』的な事を考えたけど、出てきた表情と言葉が、少し引きつった顔をしての『いや、いい』なんだろうな。


 クラフトは頭が良すぎて思考の回転数が早すぎるんだよなあ。

 それに結構細かい所まで考えている。

 王とグラディウス、そしてアーチェリーはその事を分かったような苦笑いを浮かべていた。


「まず現状の兵力差だが、味方4000、敵兵は9000前後だ」


 今日はかなり勝った。

 周りから喜びの声が上がっていた。

 今日の朝までは6000VS17000の戦いだった。

 今日は大勝だろう。


「今日の大勝はアキの功績が大きい。闇の英雄を倒し右翼を勝利へと導き、更にやぐらによる継続的な敵本陣への攻撃を可能とした。その上で爆炎ナイフによる敵本陣の攻撃と左翼への奇襲攻撃によりダッシュドラゴン部隊の援護を急速に早めた。その上で武器の英雄を引き付け、たった一人で手傷を負わせた武功は計り知れない価値を持つだろう」


 俺から見れば昨日までセバスと武器の英雄を相手に抑え込んで見せたグラディウスとアーチェリーが凄いと思う。

 自由に動けていれば2人も同じように活躍出来たと思う。


「正式な儀式は先になるが、英雄の儀式と貴族の爵位を与えたいのだ」


「その件についていいでしょうか!」

 

 ダッシュドラゴン部隊の隊長が手を上げた。


「申してみよ」

「はい!私はアキ殿によって救われました!つきましてはダッシュドラゴン部隊をアキ殿の配下として組み入れて頂きたいのです。これはダッシュドラゴン部隊すべての総意です!」


「アキ、どう思う?」

「ま、待ってくれ。そういうのは正式に決まってからにして欲しい」


 貴族も英雄も断るけどな。

 俺は戦争が終わったら自由に生きたい。


「アキ殿のおかげです。我らはライダー卿にしたがい戦線を離脱し、2度と家族と会えないと、いえ、家族からも裏切り者として、ううううう、ぐううううう」


 ダッシュドラゴン部隊の隊長が泣き出した。


「アキが貴族となり、良き領主となって貰うしかないのではないか?戦いが終われば自由などと、そのような事は皆が許さんだろう」

「管理も命令も苦手だ。そんな事より今から奇襲に行って来たい」


「アキ、今日は休もうか」


 グラディウスが俺を止め、アーチェリーも俺を止めた。


「昨日は眠くなっていたわよね?いくら回復スキルを持っていても倒れる時は倒れるのよ?」


「やる事が多くて落ち着かない。今は保留にして欲しい。とりあえずステータスを確認したいんだ。会議はここで籠城の方針だよな?それ以外に何かあるのか?」


「大きな事は無い」

「うむ、では、会議は終わる。籠城の配置は公爵と話し合い決める。会議は以上だ」


 俺は会議室を出て自室となった部屋に入る。





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