第15話

「やっと着いたわね」

「お疲れ様です。すぐに休み、ふふふ、ギルドが気になって仕方ないようですね」

「早く冒険者登録に行こう!」


 この街には体術使いや光魔法の使い手もいるらしい。

 ものまねにより俺のスキルレベルを上げることが出来る。

 

 手の甲に錬金術で爆炎の紋章を付与し、パンチと共に爆発を起こす力。

 この攻撃はまだ不完全だ。

 使うと手から血が出て腕が痺れてしまう。

 解決するには体術と錬金術のレベルアップが必要だが、体術は覚えてすらいない。

 残るは体術のレベルアップだ。


 そして光魔法を上げることで回復魔法を使う事が出来る。

 炎・水・土・風の4属性に比べて光と闇の魔法は難易度が高くレベル上げがしにくいと言われている。

 だがものまねなら早くスキルを上げることが出来る。

 回復魔法を覚えるだけで収入面では困らなくなるだろう。


 そして俺の目標でもある冒険者登録が出来るのだ。

 嬉しくないわけがない!


「早く行こう!」

「では先に冒険者ギルドに向かいますね。お嬢様も一緒に登録しましょう」




【冒険者ギルド】


 街の中にひときわ大きな建物が建つ。

 俺は勢いよく冒険者ギルドの中に入った。

 そして一直線に受付嬢の元に向かった。


「冒険者になりたいです!」

「わ、私も!」

「いらっしゃいませ、冒険者登録ですね。お名前を教えてください」


「プリンよ」

「アキです」


 受付嬢は紙を取り出した。

 紙には冒険者ランクがまとめられていた。


 冒険者ランク

 Sランク 英雄    レベル50

 Aランク 英雄    レベル40

 Bランク エース   レベル30

 Cランク 熟練    レベル20

 Dランク 普通     レベル10

 Eランク 普通     レベル 5

 Fランク ルーキー 

 Gランク 研修中



 ランクの右にあるレベルがラックアップ条件の1つになっている。

 見て分かる通りCランクは優秀で、この国にいる一番上はAランクが2人だけだ。

 よくアニメにあるAランクとSランクしか出てこないようなランク設定ではない。



「どんなに優秀な方でもGランクからのスタートとなります。研修を終えた後Fランクとなり、ここからは納品数などの貢献度、それとレベルで総合的に判断されます」


 これを言わないと『何でGランクからなんだよ!』と言う奴が出てくる。

 冒険者はハイリスクハイリターンだ。

 ランクは厳格に決めるし、実力を超えたクエストは受けられないようになっている。


「Eランクになるには研修を終えてFランクになってレベル5にしつつたくさんクエストを受ければいいのね?」

 

 プリンは笑顔で言った。

 ちなみに俺もプリンもレベル5はとっくに超えている。

 今の強さでEランクを目指せるだろう。


「その通りです!ではギルドプレートの作成に移ります。プリンさんとアキさんのジョブを教えてください」


「忍者よ」

「凄いですね!」


「俺はものまね士だ」

「そ、そうですか。苦労はあると思いますが冒険者登録は出来ます」


 受付嬢は暗い表情で言った。

 ものまね士は弱い。

 そう言われている。

 レベルを上げにくい点。

 スキルはレベル5を超えると上がりにくくなる点。

 そして極めつけは固有スキルを覚えられないと言われている点だ。

 剣士ならスラッシュ、魔導士ならファイアストームなど切り札となる固有スキルを覚えるのだが、ものまね士にはそれが無い。


 レベルを上げにくくものまねをしても劣化剣士や劣化魔導士にしかなれない器用貧乏。

 それがものまね士だ。


「ではプレートを作ります。少々お待ちください」


 受付嬢は奥に下がっていった。


「今の内に食事にしましょう」


 ギルド内には食事スペースも併用されている。

 俺達はテーブルで食事を摂る。


「受付嬢が悲しそうな顔をしていた」

「アキ君の実力を知れば対応は変わるでしょうね」

「俺は固有スキルを使えないから皆よりスキルを磨こう」


「アキなら大丈夫よ」

「一応言っておきますが、冒険者や兵士の平均レベルは10ほどで、攻撃スキルのレベルは2か3の方が多いですよ」

「俺はその倍のレベル20以上に上げて冒険者としてやっていけるようにしよう」

「いえ、そうではなくて、アキ君はすでに平均を超える強さを持っていますよ」


「プレートの作成が終わりました」


 俺とプリンは木のプレートを受け取った。

 Gランク冒険者はすぐに辞めたり、死んでしまう者も多い。

 そういう理由もあってコストの安い木のプレートなのだ。


「ものまねでスキルを磨きたいのですが、ものまね訓練の依頼を出すとしたら、いくらかかるでしょうか?」

「う~ん。スキルレベルにもよります」

 

 受付嬢の話し方が少し砕けて来た。

 フレンドリーで親しみやすい。


「体術をレベル問わず、それかレベル3以上の光魔法です」

「レベル1の体術使いなら1時間1万ゴールドも出せば行けるでしょう。光魔法の方は、1時間で10万ゴールド、いえ、もっとかかるかもしれません……ですがうまくいけばギルドで回復魔法を使う場面があります。その時にただで見ちゃうのも手ですね」


 受給の関係。

 レベル1の格闘スキル持ちは多いけどレベル3以上の光魔法使いは少ない。

 光魔法は高くなるか。


「お金か」

「大丈夫です。Gランク冒険者のあなたには打ってつけの依頼があります!薬草100束の納品です!薬草の納品は研修クエストでもありますからこなしていけばFランクにすぐなれます!一石二鳥です!」


 俺は無言でストレージから薬草を200束取り出した。


「これはプリンと俺の分です。これで薬草採取はクリアですね」

「え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!ストレージ!」


「ですね。ストレージです」


 チョコは俺を見てにこにこと笑っていた。


「や、薬草を確認させていただきますね!みんな!ヘルプミー~!!」


 受付嬢は他の職員を呼んで薬草を持って後ろに下がっていった。


 チョコはまだにやにやと笑っている。


「アキ君」

「ん?」

「ストレージの取得難易度は高いです。それとGランクの薬草クエストは何日もかけて達成する事で冒険に馴れてもらうためのクエストなんです」

「そ、そうだったのか」


 ストレージの取得は難しいと言われてはいたけど、アルケミストは余裕で当たり前のように使っていた。

 アルケミストと一緒にいる時間が長くて常識が変わってしまっていたのか!

 

「アルケミストのおかげだな」

「それもありますが、スキルはレベル5で熟練者ですがアキ君のものまねレベルは7です。まだ13歳でレベル7は相当高いですよ」


 受付嬢が戻って来る。


「アキさんの報酬と、プリンさんの報酬はそれぞれ10万ゴールドです。ストレージ持ちだったんですね。もう、言ってくださいよ」


 大人が一カ月働けば給金は大体15万ゴールドだ。

 村では10万ゴールドあれば一カ月余裕で生活できる。


「確かGランクの場合薬草採取の次は跳ねうさぎの納品でしたよね?」


 チョコは笑顔で言った。


「はい、そうですよ。跳ねうさぎ100体の納品です」

「アキ君、1000体出しましょう」

「ちょ、ちょちょ、ちょっと待ってください!場所を変えましょう」


 俺はギルド裏の解体場に案内された。


 俺は1000体の跳ねうさぎをストレージから出した。

 その瞬間受付嬢が叫ぶ。


「ギルド長!緊急事態です!」


 受付嬢が走って行く。


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