第6話 指わっか

 なんにもない、なんにもない時代の話。

狩猟での生活。食べ物が獲れなかったらひもじい生活。時には死ぬね。獲れた時はうれしいなんてもんじゃないんだろうな!天空には満天の輝く光。お腹いっぱいでぐっすり寝るだけだね。また、明日。


 なんでもある、なんでもある時代。でもお金がなかったらひもじい生活。時には死ぬね。名前のない時代と何も変わらない。ステ-キ500グラム食べて、赤ワインで流し込んだらうれしいだろうな!

 

人々は延々と食べて、生き抜いて、こどもを生んでそだててきた。未来もたぶん同じだ。単純で簡単だけどこれがね、非常に難しい。

 

 そして人は恋に落ちてきた。


 「彼女のことがすき」とドン。


 「それならその気持ちを伝えないと」と親友のチン。チンは体が大きく、肌の色が褐色だった。それで1度、矢で打たれたことがあり死にかけた。


「結婚も考えてるの?」チン


「当たり前でしょ、告白するのよ!」


チン「手ブラってわけにはいかんやろ」


ドン「マンモスの肉とかどうかな?」


チン「かなりいいと思うけど獲れる?」


「だよね~、花とかじゃ駄目よね?」


「弱いな、生活力を見せる必要あり」


「そうか、ちょっと考えてみる」

 

考える頭はドンにはなかった。でも必死ではあった。




「ただいま」とドン。


「おかえり。少しは家の手伝いをしなさいよ」と怒りぎみの母。それはそうでしょう。10人兄妹の長男だから。


「マンモスの肉を棍棒で叩いて柔らかくして」と母。


「わかったよ。ガミガミ言わないで。マンモ-の肉を叩けばいいんでしょ。棍棒なんていらないよ。こんなのグ-パンチだ。ん、ぬ、あ! これだ!」


 それから何かを作り始めた。とびきり硬い光る石があった。モグラを捕まえるときに地中から掘り出したものだ。その石をドンの好きな子がそれをつけて痛くないよう石で輪っかを作り砥石で何度も滑らかにした。出来た。1ヶ月、うそ、暦もないのでどのくらいかかったかわからない。


 ついに告白する日がきた。縁起を担いで大安、一粒万倍日にした。これもうそ。そんなものは信じるな。


「ピーちゃん、僕が好きなことはしってるよね」


ピー「うん。マンモ-でしょ。みんな好きよ」


ドン「そのとおり。じゃなくて……ピーちゃんのことが好きなの」


ピー「……わかった。それで?」


ドン「それでて、ピーちゃんはどうなの」


ピー「好きに決まってるじゃないの!」


ドン「え、え、え、本当!結婚しよう」


ピー「いいわよ。じゃ明日からね。バイバイ」


ドン「ちょっと待って。持ってきたものがあるんだ。」


ピー「何?」


ドン「これ。左手の薬指に付けて。これを付ければマンモ-の肉を棍棒を使わずにグ-パンチで……」


ピー「まあ、なんて綺麗なの。ドン、ありがとう、うれしい!町にお出かけするときに付けるわ。こんなの見たこともない!」


ドン「……そうするといいよ。綺麗だね……じぁね」


 この時代から男の気持ちを女が知ることはなくその逆もまたしかりであった。



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