第2話 コンビニの店員

 感じの悪いコンビニの店員がいる。

 いつも必ず、朝も夜も繁忙でも暇でも見事に感じが悪い。

 「いらっしゃいませ」

 「ありがとうございます」

も言わない。清潔感も微塵もない。


 僕はコンビニ10店舗を束ねた会社の社長をしている。彼は僕の支配下にあるわけだ。

彼をクビにすることなど雑作もないことだった。


 こんなことがあった。

彼がレジカウンターで対応しているときに何か言った?

「なに?」

「レジ袋は必要ですか?」と大きな声で言った。僕は怒りと恐怖で手がブルブルと震えた。


 やはり彼はクビにするしかない。


 しかし彼にも生活があろう。


 でも今のままではダメな会社だし、ダメな店員のままだ。「どうすれば……」


 目標は笑顔だ。


 この世から笑顔が無くなって久しい。


 全部とは言わない。でも顕著にだ。


「急がしい?時間作れないか?」


 店長を呼んだ。10店舗でもトップクラスの売上がある店舗の店長だ。


「申し訳ない」


「とんでもない社長、恐縮です」


「レジカウンター変えたのいつだっけ?」


「2ヶ月前です」


「あれ……元に戻す」


「はい、わかりました」


「なるべく閉めないでいいようにするから」


「はい、わかりました。ありがとうございます」



 店員だけではなく、やっと新しいレジに慣れてきたお客様にもご迷惑をお掛けする、しかも莫大なお金もかかるイカレタ経営判断であった。


 S店だけは旧態依然のレジで運営した。僕は毎日のように通った。


 バーコードを通し、代金をお預かりし、お釣りをお返しする。その間にも温めがあったり、公共料金の支払いがあったり、発注、掃除と息をつく暇もない。


 目標、笑顔は遠のいた?


 レジは行列ができた。「早くしろ」というお客様に「申し訳ございません」と詫びた。「いらっしゃいませ」が言えるようになり、「ありがとうございます」に感情が乗っていた。


 当然、彼は僕をしらない。店員と客の関係で僕は話し掛けた。


「毎日忙しいね!」どきどきする。


「いゃ~忙しいほうがいっすよ、時間が経つのが早いからエヘヘ。ありがとうございます」


 笑顔できた。


 3年かかった。


 出費した分は回収さしてもらうよ。


「後藤さん、来月から店長頼むよ!」 


「え!?」





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