エピローグ

 ハッキングされたAIロボが、カウンターハッキングによりシャットダウンされ、その場に全部棒立ちになる。再起動は正常に行われ、AI警備ロボは元に戻った。ボロボロだったが、警官たちの手当てをし始め、警察局の前は平和に戻った。所長は、パトカーの中に詰め込まれていた。警備ロボットによって助けられた所長は、警備ロボに暴徒鎮圧に向かうように指揮をし、そのあとは恐ろしく早く事は進んだ。


 まず警備ロボを搭載した警察車両が、やや劣勢に陥っていた警察官の後ろに到達した。警備ロボ介入と放水によって暴徒達は戦意喪失、散り散りに逃げ、約200人が検挙された。すぐにハッキング元も判明し、左翼ハッキング集団”雀のカゴメ”が犯人だと判明し、リーダーと複数の幹部が逮捕された。暴徒鎮圧はわずか2時間、雀のカゴメ逮捕は3日以内の事だった。

「ご主人様痛いところはないですか?」

「あぁ、ありがとう。アキこそ障害はない?」

「私は大丈夫です。あの…」

 アキの方を向く。彼女は笑顔で、

「恋愛とは何か、恋とは何か、私、わかったかもしれません。きっとこういう事なんだなって、こういう気持ちなんだなって。だから、助けに来てくれてありがとうございました」

 と言った。その言葉の嬉しさから涙が出る。それをアキは優しく、包むかのように抱きしめた。二人は現場の当事者として警察の事情聴取とテレビ局の取材などで引っ張りだこであった。アキの方は特に、”感情を持ったAI”として多くのメディアに報じられた。同時にそれは雀のカゴメの作ったプログラムであることも判明した。これが悪用されたらいけないという事で雀のカゴメからこのプログラムコードを押収、以後は警察局が改良して一般公開することになった。もちろん警察局の保護プログラム付きだ。普及とともにアキの珍しさは無くなり、二人の間に平和が訪れた。二人はこのことを一冊の本にまとめ、”僕らと社会と感情と”という一冊の本を出版した。それは大ヒットして50万部以上の売り上げを出した。


「なぁアキ」

「なんですかご主人様」

「もし死んでも、アキと一緒にいたいな」

 僕が言うと横に座っているアキはそっと僕に抱きつく。

「わかりました。いつまでも、いつまでも一緒ですよ」

 そうして、二人の午後は過ぎていく。これからの長い年月を、太陽だけが知っていた。


 大ヒットした本の筆者である高橋健斗たかはしけんとは、98歳で亡くなった。それ以降彼の邸宅では一人の長寿AIロボットと高橋健斗の記憶をプログラムしたロボットが仲良く暮らしたという。

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