第2話 うちと、わちきの食事風景

「なんだっけな……ヤサイマシマシカラメマシニンニク」


 俺の名前は山形次郎、41歳。ここに来るまで普通のおっさんだった。今は少なくとも、普通のおっさんじゃねぇし、見た目は普通に可愛いと思う貴族令嬢ってヤツだ。

 まぁ、俺があと20歳は若くて、付き合ってる相手がいない時にコイツクレアと出会ってたら、恋愛感情が湧いたかな……とは思う。

 でも、そうだとしてもコイツクレアは15歳だから、犯罪だな……。



-・-・-・-・-・-・-



 とまぁ、そんなこんなで切り身節をつくる為に乾かす方法として結論付いたのが、火か風だった訳だ。


 豚骨トンコッツのお宝で火は起こせるが、ずっと火を出していられる訳じゃ無ぇのは想定内だった。

 白湯パイタンの翼で風を起こすっていう案も考えたが、それは火を起こす以上に現実的じゃ無かった。


 拠って結論は火で乾燥させる一択になった訳だが、そうなると問題になるのは燃料だ。

 薪をダンジョン内に運んでくれる黒い猫なんかいねぇし、ペリカンもふんどし絞めたニーチャンもいねぇ。それに家を作ってる30階まで運んでもらうとしても、今この街にいる冒険者や兵士じゃ心許無ぇ。

 そこそこ実力のあった、豚骨トンコッツと仲が良かった冒険者もいなくなっちまったようだしな。


 そうなると、火を燃やし続ける燃料をダンジョン内で集める必要がある訳だが、そもそもダンジョン内に木は生えて無ぇからそれも無理な話しだった。

 兎にも角にも薪をダンジョン内に運ぶとしても、それなら外で日干しにするのと変わらねぇし、日干しにしようとしても青魚は腐っちまうからやっぱり意味は無ぇ。

 鰹の切り身節は日干しでもいけるだろうが、それだと家を造ってもらってる意味が無ぇ。

 堂々巡りの悪循環ってヤツだ。どうしようもねぇよな……はぁ。



 でもま、そんな時こそ、なるようにしかならねぇって考え直して、現実逃……じゃなくてだな思考を巡らすって事さ。どっかしらで何かしらのいい案が閃くかもしれねぇしな。

 ま、そうなったら儲けモンだし、それこそ考えるな感じろってヤツだ。ん?もう既に考えちまってるから、「考えるな以前に考えてるだろ?」ってツッコミは勘弁してくれよ。



 で……だ。結局俺は思考を巡らせてもいい案は浮かばなかった。




 話しは変わるが、白湯パイタンはスクスクと成長した。それで困ったのが服だ。俺より身長が高くなったのに、子供用のバレェの衣装みたいなのは、色々とヤベぇ。

 子供向け番組のおかっぱの嬢ちゃんみてぇに、色々と見せながら歩くようなモンだ。だがそれ以前に買おうと思ってた白湯パイタン用の下着も結局買ってなかったから、尚更ヤベぇ。

 それだと色々と見せながら歩いている、おかっぱの嬢ちゃん以上にヤベぇのが伝わるよな?


 もうこうなったら、豚骨トンコッツ同様に、コイツクレアの大人びたショーツを履かせるしかないと思ったね。見た目はもう幼女じゃねぇし、流石にノーパンでいられるよりはマシだよな?中身は幼女だから教育上は、なんかヤベぇとは思うがノーパン主義でいられるよりは大分いいだろ?

 とは言っても尾てい骨の辺りから蛇が顔を覗かせているから、普通のショーツじゃ蛇が苦しそうだった。


 だから、コイツクレアが持ってる大人びたショーツの中でも更に大人びてるヤツを白湯パイタンに履かせる事にしたんだが、なんでコイツクレアはこんなの持ってたんだろうな?

 それは俺の直感が、処女が履いていていいモンじゃないと告げていたし、コイツクレアってそんなにマセてたのか?って疑っちまったよ。

 だって、俺が人間だった頃に一度くらいしかお目に掛かった事が無ぇ、勝負パンツってヤツだったんだから。ま、俺が人間だった頃に見たヤツがどんな勝負パンツだったかは、実際には見せられねぇから、想像にお任せするぜ。

 それと、今、白湯パイタンに履かせているのは、俺が見せる気が無ぇから見たくても諦めてくれよな。



 ところでさ、豚骨トンコッツの時はちゃんとした装備品が課長のお宝から出たから服の代わりになったけど、白湯パイタンは装備制限ってヤツで、そういった装備品じゃなくて装飾品の方が多い。

 だから着せる服は取り敢えず、おっさんからこの家の使用人服を貰っておいた。

 白湯パイタンは俺専属のメイド扱いだから、使用人服じゃなくてメイド服って言うのが正解だな。今はメイドと言うよりは冒険者みてぇな感じだが、それは言わぬが花ってヤツだ。



 ちなみに、どこでも服を脱ぎたがる豚骨トンコッツとは違って、白湯パイタンはそんな事をしない、お淑やかな感じに成長してくれたのは良かったと思ってる。それに俺や豚骨トンコッツに対して毒を吐く事も失くなったから、俺としてはいい子に成長したとも思ってる。

 まぁ、豚骨トンコッツから聞いた話し……、ダンジョン内で冒険者達がナンパしてくるらしいんだが、その時は散々毒を吐き散らかしてるって言ってたから、それで息抜き出来てんのかもな?

 いや、この場合は毒抜きだな。




 まぁ、そんなこんなのうんちゃらかんちゃらで本題は先に進まねぇが、日常はこんな感じだ。で、日常ついでに鉢に蒔いた種はどうなったかって言うとだな、最初に芽吹いた双葉がどんどん大きくなっていた。


 いや……普通さ、双葉が出たら茎がニョキニョキ伸びて成長するだろ?でもコイツは双葉が成長していた。だからその双葉はもう鉢よりも大きくなってる。なんだっけかな、なんか茎が無ぇ植物をどっかで見た気がすんだけど名前をド忘れしちまったぜ。裸婦らふだかレイアだか言うのがあったよな?そんな感じだ。


 で、更に双葉の成長が止まったと思ったら、双葉の下に頭が生えていたんだ。もうね、最初見た時に心臓が口から飛び出るかと思ったよ。だって、鉢の中に生首が埋まってるようなモンだぜ?流石に目が開いてたら完全にホラーでしか無ぇけど、生首には違いねぇからビビっちまった。

 人間だった頃にヤンチャなヤツが極道に喧嘩売っちまって、頭だけ出して身体を全部地面に埋められたって話しを聞いた事があっけどさ、そんな感じなんだよ。

 まぁ、地面じゃなくて鉢だからサイズ感はだいぶ違うしシュールな絵面って事に変わりは無ぇが……。



「植物人間って、こんな感じなのか?でも、こっから身体が生えてきたら鉢のサイズ的に無理だよな?まぁ、そん時はそん時か。それよりも今は薪をどうするか考えねぇとな……」


 こうして俺の堂々巡りは繰り返されていったが、一人で考えていても結局閃かなかったから、おっさんにも聞いてみる事にしたんだ。

 困った時に頼れるお婆ちゃんの知恵袋ならぬ、おっさんの知恵袋ってヤツだ。




「——それでさパパさん。何かいい案は無ぇかな?」


「確かにダンジョン内に燃料になる物は無いね。だったらやっぱり、ダンジョン内に家を造るのを止めればいいんじゃないかな?」


「それは無理だ。ダンジョンから出たら腐っちまう切り身があるから、それだけは止められねぇ」


「そうだ!それなら、アウラウネが成長したら薪を作ってもらえばいいよ」


「アウラウネってそんな力があんのか?」


「アウラウネは植物を司るから、大抵の植物は生み出せるって聞いた事があるよ。ただ、どうやって作り出すのか、どんな植物を生み出せるかは詳しくは分からないけどね」


「それ本当なのかッ?!」


「う、うん。でもいいかい、クレア!名付けは絶対にしたら駄目だからね!……って、お、おーい、クレア?聞いてる?」


「植物を生み出せる……植物……植物……そうか!それなら、燃料だけじゃなくて野菜や穀物や海藻なんかも作れるかもしんねぇなッ」


 おっさんが最後に何か言ってた気がするが、頭の中で巡らせた閃きを大事にしたかったから、俺の耳は……その言葉を完全にスルーしてくれてた。

 こういう時便利だよな?耳は栓をしてなくても、聞きたくない時は聞こえなくなるんだからさ。



 それから俺は再び、鉢を眺める時間が多くなった。年寄りが盆栽を一日中イジり倒して、気付いたら夜になってるみたいに鉢を見詰めていた。

 最初は生首にビビった俺だが、慣れればそんな事はないし、これからの事を考えると愛着も湧いた。愛着が湧くといつの間にか、鉢に生えた生首の名前を考えていたんだ。



「なんだっけな……ヤサイマシマシカラメマシニンニクとかって、職場のヤツが昔言ってたな。俺には何を言ってるか分からなかったが、ヤサイマシマシは野菜を多めって事かな?なら、コイツは野菜をたくさん作ってくれるかもしんねぇから、マシマシだな」


 こうして植物人間はマシマシになった。で、帰って来た豚骨トンコッツ白湯パイタンにその名前を教えたんだが、二人は何故か「マシマシ」って言ってるんだろうが俺には「マシマッシ」って聞こえたのさ。まぁ、豚骨とんこつがトンコッツになった感じかな?

 マシマシって発音出来ないなら出来ないで、マシマッシでも俺としては構わねぇからそれでも別にいいんだけどな。



 こうして植物人間の名前が決まった次の朝、いつもの日課になった食事調教が俺の身体を襲う訳だが、俺は寝惚けながらいつもと違う感覚を感じていた。

 いつもの豚骨トンコッツは、ホルスタインアイアンクローを俺の顔に押し付け、俺がそれに反応するとそのまま俺の口の中に舌を入れて色々と吸ってくる。

 白湯パイタンは俺の下半身を優しく丁寧に舐め回して色々と吸っている。そして二人の手は俺の胸を揉んでいるって構図でコイツクレアの身体はそうやって調教された結果、色々な所から色々なモノを溢れさせていくんだ。


 だが今日は何かが違う。俺にある上の口も下の口も二人に吸われているのに、それらとは違う別の何かが更に俺の身体の中に入って来たのを感じていた。それは俺の腹の中に入って来ると俺の体内を掻き回していて、それが凄く気持ち良い。

 頭がビリビリ痺れるような気持ち良さで、二人に舐められて吸われる事で敏感に感じる悦楽よりも、脳を直接刺激されてるくらいの快感だった。



 結果として俺は、これまでに経験した事ないくらいイカされて、失神したらしい。そして気付いたら昼になっていて色々と大変な事になっていた。まず、腰が完全に抜けてガクガクする挙句に、立ち上がる事も出来なかった。でも無理矢理立ち上がるとフラフラでロクに歩けなかった。目眩は酷いし、意識を保っているのも辛い。

 更にはお腹の中に何かが入って来ていたからか、まだ違和感があって、時折ジンジンとお腹の中が熱を帯びて疼き、それが来ると腰が砕けたようになって上半身を起こしているのも出来なかった。

 


 俺は自分の身体に何が起きたのか分からなかったが、豚骨トンコッツ白湯パイタンは既にダンジョンに行った後だから聞く事も出来ない。

 で、暫く朦朧とした意識の回復をするべくベッドの上で休む事にしたんだ。



「あ、水あげなきゃ……。でも起きられるかな?」


「お水が欲しいの?」


 俺がベッドで横になりながら、マシマシマシマッシに水を遣ろうと独り言を漏らしたら、聞き慣れない声が返って来たんだ。



「だ……れ?」


「わーは、ましまっし。母さんのおかげで話せるし、歩けるようになった」


マシマシマシマッシ?あぁ、そっか名付けしたから、進化したんだな。なら、水遣りはもう必要ないの……か?」


「大丈夫。わーは歩けるから、水が必要なら自分で飲みに行く。でも、今は凄く喉が乾いてるから、今は母さんから水を貰う」


「そっか……俺から水を貰うって意味が分からねぇが、俺は今、立てないからセルフで頼む」


 俺は朦朧とする意識の中で、マシマシマシマッシと会話してたんだが、その直後お腹の中に何かがまた入って来た気がした。

 こうして俺は再び快楽と共に意識が飛んだ。

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